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特集 求められる議会事務局

2022.02.10 議会事務局

議会の政策力強化と議会事務局の役割 ─「行動する事務局」は可能か─

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4 議会事務局の現状と体制整備  

 以上のような政策補佐機能を担うには、議会事務局の体制を強化する必要がある。事務局が庶務と議事対応だけなく、調査機能を担ったり、さらに積極的な政策補佐機能を担うとすれば、それを担えるだけの量的・質的な組織体制をつくる必要がある。

(1)人員の確保と担当組織の整備  

 第1に、政策補佐機能を担えるだけの職員数を確保するとともに、それを担当する調査課、政策法務班等の組織を整備することである。下表のとおり、議会事務局の職員数は自治体の規模によって大きな差異があり、特に人口10万人未満の市町村は平均6人未満となっている。人口が少なくても議会の運営事務は基本的に同じであるため(年間平均議案件数は、人口10万人未満の市町村でも87~116件)、この職員数では調査機能を担うことも難しい。これらの自治体は議員も10~20人程度であるため、1~2人を増員するだけでも、調査機能や政策補佐機能を担うことは可能であろう。また人口10万人以上の中規模自治体の議会では、政策調査課や政策法務課などより専門的な組織を置くことが考えられる。  
 第2に、都道府県・政令市等の議会では、会派ごとの調査担当スタッフを配置することである。前述のとおり、政策補佐を行う場合は各議員・会派の政治活動に関わるし、情報の守秘も必要となるため、一定規模以上の会派には、常勤・非常勤あるいは任期付きの職員を配置し、主として当該会派の政策補佐に従事させることが考えられる。また、現在も行われていると思われるが、政務活動費を利用して独自にスタッフを雇用したり、有識者とアドバイザー契約を締結したりすることも考えられよう。
1出典:総務省「地方議会の運営の概況」から抽出(https://www.soumu.go.jp/main_content/000675286.pdf

表 地方議会の議員と事務局職員の平均数(2019年現在)

(2)事務局における専門人材の養成と確保  

 実際にこうした機能を発揮するには、これを担える人材を育成・確保する必要がある。
 第1に、法的・政策的な経験の高い職員を継続的に配置することである。執行機関側とも調整し、たとえば法制担当課で法制執務を担当した職員、企画課等で総合計画等を担当した職員を事務局に配置することが考えられる。  
 第2に、事務局職員の研修を充実させることである。事務局単独で事務局職員研修、政策法務研修等を実施することのほか、執行機関との合同開催、都道府県単位の議長会等での共同開催等が考えられる。大学院等の研究機関に派遣することも有効であろう。  
 第3に、議会独自の職員採用を行うこととし、専門人材を確保・養成することである。たとえば若手研究者や若手法曹を任期付き職員や非常勤研究員として採用することが考えられる。現に法曹資格者を任期付き職員等として任用する例は少なくない(2019年6月現在、全国120自治体で184人の法曹資格者を登用。日弁連調べ)。議会事務局もそうした対応を行うことが考えられる。  
 第4に、法律家や有識者を専門委員等として委嘱することである。たとえば議員提案で政策的条例をつくるには、法的検討と政策的検討が必要であるため、議会事務局として日常的に有識者の助言を受けられる体制をつくることが考えられる。  
 議会事務局の積極的なサポートによって、議会の政策形成が進むことを期待したい。

■参考文献
◇礒崎初仁(2017)『自治体議員の政策づくり入門─「政策に強い議会」をつくる』イマジン出版
◇礒崎初仁(2019)「自治体議会の政策力をどう強化するか─討議する議員・役立つ議会」ガバナンス2019年6月号
◇礒崎初仁(2020)「自治体議会の課題と事務局の役割─『政策に強い議会』をつくる」アカデミア133号
◇江藤俊昭(2012)『自治体議会学─議会改革の実践方法』ぎょうせい
◇大森彌(2002)『新版 分権改革と地方議会』ぎょうせい
◇大森彌(2021)『自治体議員入門』第一法規
◇香川純一・野村憲一(2015)『自治体の議会事務局職員になったら読む本』学陽書房
◇神原勝(2019)『議会が変われば自治体が変わる(神原勝・議会改革論集)』公人の友社
◇佐藤竺・八木欣之介編著(1998)『地方議会活性化ハンドブック』ぎょうせい
◇清水克士(2017)『議会事務局のシゴト(自治体の仕事シリーズ)』ぎょうせい
◇新藤宗幸(2013)『日曜日の自治体学』東京堂出版
◇全国市議会議長会編(2017)『地方議会議員ハンドブック〈改訂版〉』ぎょうせい
◇全国町村議会議長会編(2019)『議員必携〈第11次改訂新版〉』学陽書房
◇髙沖秀宣編著、議会事務局研究会(2016)『先進事例でよくわかる 議会事務局はここまでできる!』学陽書房
◇竹下譲(2010)『地方議会─その現実と「改革」の方向』イマジン出版
◇辻陽(2019)『日本の地方議会』中央公論新社
◇中邨章監修、牛山久仁彦・廣瀬和彦編(2012)『自治体議会の課題と争点─議会改革・分権・参加』芦書房

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