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特集 求められる議会事務局

2022.02.10 議会事務局

議会の政策力強化と議会事務局の役割 ─「行動する事務局」は可能か─

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2 議会事務局の基本的あり方と政策補佐機能  

 次に、議会の政策機能強化のために、議会事務局はどうあるべきかを明確にしておく必要がある。特に事務局が政策補佐機能をどこまで担うべきかが問題になる。

(1)議会事務局の政策補佐機能をどう考えるか─二つの問題点  

 議会事務局の役割は、主として、①庶務の処理(議長等の秘書、議員の報酬・政務活動費、経理、広報等)、②議事の運営(本会議・委員会の運営、請願・陳情の受付け、議事録の作成等)、③政策形成の補佐(政策課題に関する情報収集、法令・政策例の調査、政策案作成の支援等)が挙げられる。一般の市町村議会の事務局は、③の役割を十分に有していない場合が多いが、今後はこの政策補佐機能を強化する必要がある。  
 この政策補佐機能に関して問題になるのは、事務局職員が各会派・議員の政策形成を積極的に補佐・支援することが可能か、適切かという点である。この点に関しては、二つの障害・問題点がある。  
 第1に、事務局職員の政治的中立性や議員間の公平な対応に反しないか、という問題点である。議会は価値観や政策姿勢の異なる議員によって構成されており、国政政党・地域政党を基礎として活動する議員も少なくない。それだけに、議員全員をサポートすべき議会事務局は、中立の立場に立つべきであり、特定の議員・会派・政党に肩入れすることは許されない(香川・野村 2015:33)。また職員の多くは一般職公務員であるため、職務において政治的中立性が求められ、個人としての政治的行為も制限されている(地方公務員法36条)。議員や会派の政策活動は、政治活動と密接に関係しており、政策活動を補佐することは、結果的に政治活動を支援する側面を持たざるを得ない。  
 しかし、議会が政策形成機能を発揮するには、法務・財務等の政策知識を有し、各分野の実務に詳しい人材の協力を得ることは不可欠である。そもそも議会は政治機関であるため、その事務局に配属されれば、政治活動に関与し、その一端を担うことは避けられない。職員個人の意向で特定の議員や会派を応援することは許されないが、一定のルールの下で議員の政治活動を補佐したとしても、違法・不当という問題は生じないと考えられる(首長部局の職員が首長の政治姿勢に沿った政策を立案・実施しても政治活動に当たらないことと同様である)。問題は、議会事務局として、議員・会派の政策活動をどこまでサポートするかというルールないし守備範囲の問題なのである。  
 第2に、議会事務局にこうした政策補佐機能を十分に担える人員や時間的余裕があるか、という問題点である。特に小規模自治体では、4で後述するとおり、調査担当の係や職員が配置されていないことが多い。今後多くの議員や会派が政策づくりに取り組むと、事務局がこれをサポートすることは難しくなる。しかし、この点は実務的・現実的な問題であり、今後、事務局体制を強化するとともに、ここでも一定のルールをつくって政策補佐に取り組むべきであろう。  
 そのルールについては、議長、議会運営委員会、事務局長等で協議して、たとえば、①会派ごと・分野ごとに担当職員を明確にする、②会派・議員が年度ごとに政策検討計画(仮称)をつくり事務局とその補佐の内容や範囲について協議する、③政策形成のプロセスごとに議員と事務局の役割を申し合わせする、といった方法が考えられる。  
 なお、事務局職員が議員・会派の政策活動をサポートするうえで、そうした活動で得られた情報をいかに守り、管理するかという問題もある(香川・野村 2015:216)。事務局職員は、政策補佐の中で知り得た情報については、執行機関、他の議員はもちろん、同僚職員(上司である事務局長は除くべきであろう)を含めて漏らさないことが必要になろう。

(2)考えられる議会事務局のタイプ─「行動する事務局」は可能か  

 議会の政策形成や改革にどのような姿勢をとるかという視点から、議会事務局のタイプ分けを考えてみよう。試論であるが、現行の事務局は四つのタイプに分けられるのではないだろうか。  
 第1に、「管理抑制型事務局」(反対する事務局)であり、議員は知識・経験が乏しいため、適切に管理・誘導しようとするタイプである。議員や会派が新しい政策や議会運営を考えても、法令や前例(先例)を理由として反対し、改革の芽を摘むことが多い。それだけに法令や前例をきちんと勉強していることが多く、頼りになる面もあるが、議会改革にとってはマイナス効果をもたらすため、意識変革が求められる。  
 第2に、「受動補佐型事務局」(指示を待つ事務局)であり、議員活動を補佐する立場であることを理解し、事務局としていわれたことだけに対応しようとするタイプである。議員や会派の要請にも表面的には応じるが、一線を画していて、議員活動が成果を挙げられるようサポートしようという意識は少ない(清水 2017:15のいう「ひとごと意識」である)。法令や政策の勉強には関心がなく、議会改革にも後からついていくという姿勢であるため、頼りになりにくい。  
 第3に、「積極補佐型事務局」(役に立つ事務局)であり、議員活動を補佐する立場であることを理解し、事務局として積極的にサポートしようとするタイプである。議員や会派の要請があれば、どうすれば目的を実現できるかを考え、プラスアルファの調査や情報提供をしようとする。積極的に動く議員や会派がいれば、議会改革をしっかりとサポートし、プラスの効果をもたらしてくれる。
 第4に、「能動提案型事務局」(行動する事務局)であり、議員活動を補佐するだけでなく、活力ある議会に向けてともに努力するパートナーであると考え、議員や会派にも提案や支援を申し出るタイプである。「オール議会」で課題に取り組む必要があると考え、議員や会派の指示や要請がなくても、政策課題を選定して研修会を企画したり、住民との勉強会を提案したりする。楽をしたい議員からは疎まれるかもしれないが、議会改革のきっかけや機運をつくることができる。  
 私の限られた経験では、小規模自治体の場合は第1タイプと第2タイプが多いと思われる。これらの議会の場合は兼業の議員も多く、常勤職員からなる事務局がある程度リードする必要があるため、第1タイプになりやすい。今後も、調査課等の組織を設置することは難しい面があるが、限られた職員で担える範囲で第3タイプをめざす必要があろう。
 これに対して、中規模・大規模自治体の場合は、第2のタイプが多いと思われる。大都市・都道府県の議会の場合は、大規模な選挙で当選した専業の議員が多く、会派間の緊張関係もあって、事務局は受動的な役割に徹しているように感じられる。こうした事務局は職員数は少なくないし、調査課等の部門も置かれているため、今後は第3タイプに転換すべきであり、さらに可能であれば第4タイプをめざすべきだと考える。

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