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特集 求められる議会事務局

2022.02.10 議会事務局

議会の政策力強化と議会事務局の役割 ─「行動する事務局」は可能か─

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中央大学法学部 礒崎初仁

はじめに  

 いま自治体議会は危機に直面している。2019年春の統一地方選挙では、都道府県議会と町村議会で無投票当選が増え、議員のなり手不足が話題になったし、全体に選挙の投票率も低下した。議会に対しては、住民から、十分な役割を果たしていない、報酬や政務活動費が高すぎるといった批判が強かったが、批判は期待の裏返しともいえた。しかし最近の状況は、議会には期待も関心も持っていない住民が多数になったことを示しているように思われる。議員が「特殊な人々」とみなされ、地域社会から遊離した存在になりつつあるとすれば、「自治」にとって深刻な問題である。
 こうした危機を克服するには、議会が政策形成機能を発揮して、「役に立つ」ことを示す必要がある。特に少子高齢化と人口減少によって、地域の活力が失われ生活条件も悪化して、自治体には多くの課題への対策が求められている。  
 そのためには、議会による政策形成機能の強化が必要であるが、同時に議会事務局がこうした取組みをサポートし、改革を支えることが不可欠である。従来、事務局は議事と庶務を担当する受け身の組織のように思われてきたが、議会が置かれている状況を考えると、議会の政策形成を積極的に担える事務局が求められるのではないか。  
 人口急減時代に議会事務局がどうあるべきか、固定観念にとらわれず考えてみよう(以下は、礒崎 2017、礒崎 2019、礒崎 2020を基礎としつつ、議会事務局の役割に焦点を当てて検討したものである)。

1 自治体議会の改革─「政策に強い議会」をつくる

(1)議会の機能と改革  

 自治体議会には、①政策形成機能(条例制定等によって議会自らが自治体の政策をつくる役割)と、②行政監視機能(執行機関の活動を監視し、是正・抑制する役割)という二つの機能が期待されている。そして、現在の議会に不足しているのは政策形成機能であり、条例、予算、自治体計画等を通じて住みやすい地域をつくることだと考えられる。 
 これに対して、論者によっては、議会には予算編成権がないし、事務局体制も不十分だから、①の政策形成機能を果たすことは難しいことから、②の行政監視機能を中心に強化すべきだという意見もある(新藤 2013:53-55、竹下 2010:214)。しかし、議員は法務や財務の専門家ではないから、議会の監視機能とは、事務処理の違法性や財務上の問題点をチェックする受け身の監視機能ではなく、首長等の政策判断の是非を問い、自治体の政策展開を監視・誘導していく能動的な統制機能だと思われる。そうだとすれば、この行政監視機能は政策形成機能と連携する形で一体的に発揮していく必要がある。政策形成機能の強化が行政監視機能の強化にもつながるのである。  
 そこで、自治体議会が政策形成機能を強化するために何をなすべきか、そして議会事務局がそのためにどのようなサポートをすべきかが問題になるのである。

(2)議会改革の方向性と事務局の役割  

 ここで、より広く議会をどういう方向に改革すべきか、明らかにしておこう。
ア 諮問型議会から「政策形成型議会」へ  
 まず、首長の提出議案を受けて受動的に審議する「諮問型議会」から、自ら地域の課題を把握し、それに対する政策を提案する「政策形成型議会」に転換することである。政策形成といっても、議員提案条例のように自ら提案・決定するだけでなく、予算案のように首長提案であっても、事前に新しい事業を提案したり、原案を修正したりすることによって、議会の方針に沿った予算に仕上げていくことも考えられる。  
 議会事務局も、諮問型議会では守りの姿勢でよかったが、「政策形成型議会」に向けて議員による政策検討のサポートなど、より積極的な関与が求められよう。
イ 閉鎖型議会から「協働型議会」へ  
 次に、議会の内部だけで検討・審議する「閉鎖型議会」(自立型議会)から、住民・NPO・有識者と連携しながら問題解決に取り組む「協働型議会」に転換することである。議員は選挙の際には地域住民との接点を大事にするが、議会活動になると住民との連携を軽視しがちである。また議会内部だけで検討したのでは、執行機関側の一方的な情報に依存する結果になる。政策形成機能のためにも行政監視機能のためにも、外部の情報や知恵を吸収し、連携して議会活動に反映させることが重要である。  
 議会事務局も、閉鎖型議会では議会運営を中心とした内向きの仕事でよかったが、「協働型議会」に向けて、議会活動の広報に力を入れるとともに、住民・事業者と議員の関係づくりをサポートし、その意見や提案が議会の審議に反映されるよう参考人制度の活用等に取り組む必要があろう。

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