元山口県田布施町議会議員 高川喜彦
議会だより発行の経緯
山口県田布施町議会が「議会だより」を発行するようになったのは、昭和59(1984)年7月20日でした。
その年の夏の初め、町の婦人会の役員の方が当時の議長に面会するため来庁され、私は議長室へご案内しました。
後日、議員全員協議会が開かれ、議長から「婦人会から『議会の様子や会議で決まったことを知らせてほしい。自分たちも選挙で選んだ議員さんの活動が分かれば理解や協力もできる。郡内でも町の議会のことを知る「新聞」があるそうだから』との強い要望があったので、何とか実行したい」との話があり、反対などなく、大筋「了解」で議会だよりを発行する方向に決まりました。そして、議会だよりを発行されている町の視察や研修を重ね、議員間でも協議や細部の打ち合わせ、編集委員の決定など、これからの準備が活発に行われました。
郡内のある町に研修で訪問した際、長年議員を経験されている名士の議長さんが、貴重な話をしてくださった後で、休憩中に私たちの顔をのぞき込んで「実際、話では簡単に聞こえると思いますが、始めたらやめられんよ。あんたらできるかね」と確かめられました。私は一瞬身構えたことを覚えています。
議会だよりの歩み
視察やいろいろな事前研修に続いて編集委員会が決まりました。当時、本町には常任委員会として総務、経済、建設、文教厚生の4委員会があり、「その他の委員会(特別委員会)」として議会広報委員会が設けられました(現在は総務文教、経済厚生、議会広報の3常任委員会)。
議会だより発行規程(創刊当時)
◦発行:創刊号 昭和59年7月20日、以後定例会ごとに、終了後1か月以内。
◦編集委員:5人 議会事務局:2人
◦紙質:上質紙55キロ
◦刷色:濃紺
議員の発言(質問、報告等)は1件につき21行とし、町長はじめ執行部の答弁も議員がまとめ、なお広報に載せる議員の質問、答弁については、正確を期するため広報委員がチェックに当たりました。
このほか法律や法令の引用、例文の例示にも気を配り、個人又は団体などから預かった貴重な写真なども正確な取扱いと保管を徹底するよう心がけました。
田布施町の「議会だより」に毎号使用している題字は、岸信介元内閣総理大臣の揮毫(きごう)であり、創刊以来、大切に印刷しています。
こうした偉大な大先輩の前では何の取り柄も持ち合わせていない私たちでしたが、定例会ごとに発行してきた「議会だより」のそれぞれの紙面には、その時々の「議員の精一杯」が込められていることに気づきました。
例えば、編集委員のある人は青少年の教育にボーイスカウトの「会長」として情熱を注ぎ、またある人はもう40年も地域や人々のために議員として心を砕いています。
そして、本町の歴史や古墳や風土、戦争体験などについて詳しく書いてくださった郷土史家の方々のご協力は、大切な若者の教育につながっています。
こうした議会広報・広聴の歩みは多くの町民の皆さんがおられたたまものであり、そのおかげでできたのだと思います。町民の一言一言を本気でしっかり聞くと、いつも心を打たれます。