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2021.12.27 広報広聴

「開かれた議会」のための広聴とは~自治体議会の広聴活動と政策立案・行政監視機能~

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3 住民アンケートの意義と品質  

 次に、調査広聴の手法である住民アンケートについて考えてみたい。“住民の声を起点とした政策立案”のためには、議会報告会で得られた参加者の意見・要望とともに、住民アンケートや意識調査といった科学的手法によって集めたデータも不可欠である。

(1)住民アンケートの意義  
 繰り返しになるが、議会報告会から得られたデータはあくまでも、その場の参加者がもつ意見・要望であり、住民を代表するものではない。そのようなデータのみを基礎にした政策提案は執行部に対して説得力が十分にあるとはいえない。政策立案のためには、住民の個人的な体験や判断に基づく意見・要望と地域住民全体の意識・行動の分布や構造をあわせて把握することが必要である。言い換えれば、住民の日常生活における体験・判断に基づく主観的データと“沈黙する市民”からの声を含めた住民全体を対象とした客観的なデータがそろってこそ執行部に対して説得力をもつ政策提言ができるのである。この二種のデータは基礎自治体の政策立案においてとくに有効であると考えられる。なぜなら、基礎自治体の政策や施策は地域住民の日常生活における利害と結びついたものであることが少なくないし、また自治体と住民との間の距離も国政レベルと比較するときわめて近く、主観的データと客観的データの関連性が高いからである。  
 地域課題の発見、政策立案、行政監視を含めた政策過程において議会が必要とするすべての情報を集めることは不可能ではあるが、議会にはリソースの制約のもとで可能な限り多様な観点からデータを集めて政策立案に活用することが期待される。

(2)住民アンケートの品質 
 母集団・標本を前提とする住民アンケートの目的は母集団の特性を知ることである(1)。母集団から無作為抽出により標本を作成し、それを測定したデータから母集団全体の特性を推定する。住民アンケートは面接法や留置法といった手法により実施されてきた。しかし、昨今のプライバシー意識の高まりや住宅環境の変化などの影響からこれらの手法による回収率が急落し調査品質の低下が問題となっている。回収率の低下は調査有効層に偏りを生じさせ、母集団の代表性を損ない、結果から推定した母集団の特性に対する信頼性を低下させることになる。つまり、住民アンケートから得られるデータからの母集団特性の推定を困難にするのである。  
 ここでは、回収率の低下が調査結果の解釈に及ぼす影響について事例を使って確認する。議会広報紙の閲読率を調査した二つの結果(A調査・B調査)がある。A、B調査ともに標本数は3,000人、A調査の回収率は35%、B調査は65%とする。回収標本から得られた閲読率のデータはいずれも56%とする。ここで議会広報紙の閲読率は住民の過半数を超えているかについて考えてみる。さまざまな誤差を無視すれば、A調査では未回収分1,950人(標本数3,000人−回収数1,050人)のうち912人(1,950人の約47%)の閲読回答がないと過半数の閲読があるとはいえない。他方、B議会では未回収分1,050人(標本数3,000人-回収数1,950人)のうち408人(1,050人の約39%)の閲読があれば過半数を超える。未回収となった対象者の回答をどのように考えるかによって議会広報紙の閲読率データの解釈は変わってくる。たとえば「A調査の未回収分には議会に関心がない層が多くを占めている」と想定される場合、未回収分の47%に該当する人が議会広報紙を読んでいると考えることには無理があるだろう。つまり、未回収分が増加するほど標本の測定値56%という数値の信頼性は低くなり、過半数の住民が議会広報紙を読んでいると解釈することが難しくなるのである。
 このように、調査広聴による品質の高いデータの取得はますます難しくなっている。しかし、住民の声を反映した政策づくりには一定のリソースを投入してでも客観的データを集める価値があると思われる。  
 下の図は議会報告会と住民アンケートから得られるデータについて収集の流れを整理したものである。
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図 議会報告会と住民アンケートのデータ収集プロセス

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