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特集 ポストコロナ時代の地方議会

2020.07.10 コロナ対応

ウィズコロナ・アフターコロナで議会はどう変わるか

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5 オンライン会議の法制度上の課題

 4月に入ってからも、新型コロナウイルスの感染者数が増加し続け、収束の兆しが見えない中、地方議会では4〜5月の臨時議会、6月の定例議会は議事堂に参集できないのではないかという不安が広がった。
 早稲田大学マニフェスト研究所では、緊急調査を踏まえ、4月10日に「地方議会は、新型コロナにどう対応したか?(その1)」を発表し、前述した取手市議会の取組み等を紹介するとともに、次の2点を提言した。
① 会議規則や議会BCPを見直し、議事堂に参集できない場合の参集場所(物理的空間、オンライン空間)の指定方法や指定先確保を行うこと。
② オンライン空間(ウェブ)で会議を開くため、議員全員がパソコン・タブレット端末を所有するなど、ペーパーレス化(紙削減・業務効率化)とは別の観点から議会のICT化を早急に進めること。
 さらに、4月下旬には英国下院議会がオンライン会議サービス「Zoom」を導入したことも報道される中、早稲田大学マニフェスト研究所は4月30日に、「地方議会は、新型コロナにどう対応したか?(その2)」を発表した。
 これは、先の提言発表を受けて、オンライン会議の検討に動き出した議会があったことも踏まえ、さらに踏み込んでオンライン会議の課題や方策を提言したものである。
 技術的な課題もそうだが、オンライン会議で議案採決することは瑕疵(かし)議決に当たるのではないかなど法制度上の課題の方が現場では懸念されていた。地方自治法(以下「法」という)が制定された昭和22年には、インターネット通信技術を使って、まさかテレビ電話により映像と音声で会話ができる時代が来るとは想定し難かっただろう。このため、法にも解説集にも行政実例にも、議場以外でそれもオンライン空間で開催できるか否かの記述は見当たらなかった。
 法では、“会議”、“議場”、“出席”という各ワードが頻出するが、“会議”とは本会議のことを指している。また、直接的な明記はないが、当然、議事堂(議場の外側)に参集した議員が、“議場”の中の自席に座ったことをもって“出席”としているものと常識的に考えられる。
 定足数を規定した法113条は、議員定数の半数以上の議員が出席して会議が成立することを、表決を規定した法116条1項は、議会の議事は出席議員の過半数で決することを記している。
 どちらにも“議場に”という修飾語は当然のことであるため使われていないが、これらを分かりやすく例えれば、議員の定数が20人の場合、10人が出席すれば会議が成立し、そのうち議長を除く9人のうち5人の賛成者又は反対者があれば議決が成立するという、民主主義の原理である多数決の原理を表した規定であり、議場うんぬんのものではない。
 なお、非常時に議場に10人しか出席できずに賛同者5人で決するのと、議場以外に集まることで20人が出席した上で賛同者10人で決するのと、より民主主義の原理にかなうのはどちらか今後議論されてもよいのではないだろうか。
 ここで重要なのは、議場に出席する前提にもなる「議事堂に参集する」ことを規定しているのは、法ではなく会議規則1条であるということである。会議規則とは、法120条において各々議会が制定することを義務付けられたもので、主に本会議に関することで法に規定するもののほかは規則委任されている。付け加えて、会議規則の制定は議会の自律権の象徴でもある。
 このため、早稲田大学マニフェスト研究所が提言したように、会議規則の範疇(はんちゅう)において議事堂以外に参集することを規定することは自律権の見地からも可能と考えられる。なお、議事整理権を規定した法104条を根拠に、議長は議場以外の場所を指定する権限も有しているとする見解もあり、議事整理権の見地からも可能と考えられる。

6 総務省による通知

 こうしたことを背景に、オンライン会議により委員会や本会議を開催して法的に問題がないかどうか、議長会や総務省に現場から問合せが寄せられ、4月30日の総務省通知「新型コロナウイルス感染症対策に係る地方公共団体における議会の委員会の開催方法について」となったと推察できる。
 総務省が行った通知は、法245条の4第1項に基づく技術的助言で、大臣又は都道府県知事が自治体に対して、自治体の事務の運営について助言を行うものである。
 地方分権改革以前の通達から名を変えたものであり、分権後は自治体の事務は自主事務であるが故に本来は自治体が独自に判断し行うべき事務ではあるが、自治体現場でも判断に困った場合に通知は出される。ただし、以下紹介する助言内容からも分かるように断定的な表現は避けており、あくまで助言を踏まえて判断するのは議会自身であるということである。
 技術的助言を何点かに分けると、①委員会の開催は不要不急の外出には当たらないと考えられること、②条例(委員会条例のことか?)や会議規則等の改正等を行い、感染拡大防止措置の観点等から会議室への参集が困難な場合にオンライン会議による委員会の開催は差し支えないと考えられること、③公開要請への配慮、議員の本人確認、自由な意思表明の確保等に留意して、会議室にいる状態と同様の環境をできる限り確保すること、④情報セキュリティ対策を適切に講じること、⑤法113条・116条1項における本会議の出席は現に議場にいることと解されていること、となる。
 ここで詳細まで言及しないが、③の内容は「等」が多く、コロナ禍に限定したものかどうか判然としない。また、本通知の件名がなぜか委員会のオンライン開催の問合せを前提としたものとなっており(おそらく本会議も含めたオンライン開催の問合せだったはずだが)、通知では「〔委員会〕条例の規定に基づき、委員会の適切な運用に取り組まれているものと承知しています」と冒頭触れ、法から条例委任されている委員会(条例)で運用する分にはオンライン開催も構わないといった論調で本会議にはあまり触れようとしていない。
 そして、最も言及したいのは、前述した法の定足数と表決を持ち出した上で、本会議の出席は現に議場にいることと解されていると最後に添えた点である。素朴な疑問は、いつ誰が解したものを持ち出しているのか。そして議場という場所について言及するのであれば、法の定足数と表決だけを引き合いに出すのではなく、会議規則1条の規定や会議規則という位置付けにも触れるべきではなかったかという点である。
こうした点からも、早稲田大学マニフェスト研究所は、法において参集場所・出席場所の指定のあり方を明文化すべきとして、法改正を求める意見書案を後に発表している。

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