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特集 議会×ファシリテーション

2020.04.27 仕事術

議会・議員活動とファシリテーション(特集4)

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住民自治を育む議会(可児市議会)

 議会活性化特別委員会で企画運営する「地域課題懇談会」(高校生議会やママさん議会、各種団体との懇談会等)は、市民の意見を議会運営の改善や執行部への政策提言に反映させる取組みだ。例えば、可児高校との連携では議員と議会事務局、NPO縁塾、文化創造センター職員、可児校生、可児高校の担当教諭で月1回の定例会と必要に応じて臨時会議「学校地域連絡会議」を開催するなど多様な人が参加する。これらをとりまとめるのが岐阜県可児市議会議員だ。地元企業や経済系各種団体、NPO、教育機関、各種団体とのネットワークを常日頃から意識した活動なくして地域課題懇談会は有効に機能しない。可児市では、市長、議長、副市長、教育長、可児高校校長、可児工業高校校長、農業大学学長、園芸アカデミー学長、警察署長、消防署長が3か月に一度、ランチミーティングで意見交換もしている。
 可児市議会は、議会基本条例をもとに活動を振り返り、20歳未満の意見を集約していないことに気づいた。同時期、可児高校が大人や社会と関わる機会を求めていた。両者の思惑が一致し高校生議会がスタートするのだが、各種団体等の協力を得て進めていくのは一筋縄ではいかなかった。例えば、医師会との連携は相手の事情もあり交渉が難航した。そのとき週2回ほど医師会長を訪ねて話し、また医師会の定例会で高校生との交流の重要性をレクチャーするチャンスをもらい、3か月にわたり粘り強く説明した結果、医師会とのコラボが成立した。このことがさらなる成果につながった。岐阜大学医学部地域枠へ2人の合格者を出すことができたのである。それにより「成績が下がったらどうするのだ」と消極的だった学校関係者が協力的な姿勢に変わった。また、商工会議所では常議員会の折に時間をもらってプレゼンし、地域課題懇談会に地元企業や商工会議所役員が多数参加してくれるようになった。
 本気の大人を交流の場に巻き込むことで化学反応が起きた。これを繰り返すことで地域や大人の理解が進み、高校で体験して大学生となった生徒たちの協力でさらにステップアップしていく好循環になっている。各種団体から議会への信頼感が生まれ、議会がつくったNPO縁塾も動きやすくなっている。議会が、まちづくりのファシリテーターの役割を担い、地域をまとめ上げて成果を出していった好事例といえる。

地域課題を解決する議会(会津若松市議会)

 福島県会津若松市議会は、市民から「次の意見交換会はいつですか」と聞かれるほど市民に頼りにされている議会である。議会報告会や意見交換会を開催するにつれ参加者が少なくなると嘆く議会からみると驚愕(きょうがく)の議会だ。
 積雪の多い会津では除雪排雪が課題である。「地区別 議会と市民の意見交換会」で、①市の方針として私道や行き止まりの道には除雪車を入れない、②除雪車が通った後のいわゆる間口除雪は雪が固まっており高齢者にとっては大変な負担である、③除雪した雪を町内の交差点角に積まれ道は狭くなり見通しも悪くなる、という意見が挙がった。行政は条例や規則で定めたものしか執行しない。しかし、そのルールの網の目にかからないが現実に困っている地域課題はたくさんある。議会はその現場の実態に目を向け、解決にとりかかった。所管の建設委員会が研究テーマとして先進地視察をしながら論点や解決方法を探り、予算や決算審査の際に質疑をしたり、付帯決議・要望的意見を付けて議案を通してきた。結果、公共性が高い私道は除雪されるようになった。また、それ以外の私道除雪対策として町内で除雪機を買う場合や業者に町内で除雪を頼んだ場合に補助金が出るようになった。②の課題については、町内でスノーバスターズというボランティア組織が徐々に結成され始め、高齢者住宅の間口除雪を手伝ってくれている。③は排雪予算に限りがあるので、雪捨場である2か所の川まで運ばずとも町内の公園や空き地を春先まで仮置き場として使えないか調査と提言を担当委員会が執行部に行っている。このほか、除雪排雪を請け負っている建設業者との意見交換の場を設け、発注の仕方や効率性などを聞き、さらなる研究を進めている。議会が施行部では解決できない現場の現実を見事に吸い上げ解決しているのだから、議会が行う意見交換会に人が集まるのもうなずける。議会が住民の声に耳を傾け、現行事業の隙間により発生している地域課題を住民・行政・議会内で見事にファシリテーションしたことによって解決した事例といえる。

第三者がファシリテーションを務める議会(東京都瑞穂町議会)

 東京都瑞穂町議会は住民との意見交換会「まちなか会議」を開催しているが、「特定の人が長時間話すのを制御できない」、「議会に対して否定的な発言ばかりするため本題が進まない」、「他の参加者が発言する雰囲気になりづらい」、「十分な意見交換の機会になっていない」という悩みがあった。
 瑞穂町議会は早稲田大学マニフェスト研究所(以下「マニ研」という)と年間を通じて議会改革に取り組んでいたため、まちなか会議の司会進行役をマニ研へ委託し、マニ研は第三者として議会と住民との意見交換の場のファシリテーションを行った。第三者が行うことで、次のような効果があった。
・特定の人が長時間話すことを制し、参加者に幅広く意見を求めることができた。
・議会への否定的な意見については、発言する時間帯を別に設けることで対応できた。
・話が脱線せず時間内で所期の目的を達成することができた。
・会議のルールを守ってもらいやすい雰囲気になった。
 時として、議員と住民が異なる意見を述べ合う場合、感情が高ぶり対立の様相を呈するケースがあるが、第三者がファシリテーターを務めることで、いずれの意見も否定せず、発言された意見のポイントをくみ上げることで議論の場を醸成しやすくなる。地域やテーマにしがらみを持たない第三者のファシリテーションにより有益な議論の場をつくった事例といえるのではないだろうか。


 議会の“議”という文字は「話し合う」という意味があり、“会”は集団という意味があることから、“議会”とは「話し合う集団」といえる。話し合って一つの方向性を決める(議決)ためには、議会内外をとりまとめていくファシリテーターの存在が不可欠となる。ファシリテーションスキルを習得することによって、議会内の議論の場でも、住民との対話の場でも、行政職員との質疑応答の場でも、限られた時間内に有益な話し合いが可能になる。
 最後に飛躍したことをいえば、今後、住民の中にファシリテーターが育ってくると、その住民ファシリテーターが核となり議会と住民とをつなげて議論する場を創出していくだろう。議会主導ではなく住民主導でまちづくりが展開される場面が複数出てくることを期待している。その第一歩として、議会内でファシリテーションを学び実践する機会をつくろう!

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