5 議会報告会の失敗から学ぶ
話し合うことの難しさや奥深さは、議会報告会の失敗から学ぶことが多い。
議会報告会では、参加した住民の中でも、特定の人だけが発言する場合が多い。そしてそれは、行政や議会に対する不満に満ちている。
言いたいことを一方的に言い放ち、発言した人それぞれがガス抜きできて、その人たちにとっては何となく満足して議会報告会が終わる(議場でも似たようなことはないだろうか?)。
逆に、議員は打たれまくって意気消沈して帰ってくる。さらに頂戴した意見を宿題として持ち帰ってくるが、その宿題をどう話し合うか(議員間討議)が未熟なため、どんどん宿題がたまっていく。こんなことが繰り返されて、議会報告会をやめようかという雰囲気が議会に漂っていた。
そこで、筆者は今までの重苦しい議会報告会から180度雰囲気を変えて、住民と話合いをしようと提案した。重々しい住民説明会や謝罪会見のような対面式のレイアウトはやめ、参加者が一方的に意見発表するのではなく、その場にいる皆が出席者ではなく参加者として双方向で話し合える話合いを訴えた。
6 議員間討議も議会報告会もファシリテーションが命
休憩中のような雰囲気でできる議員間討議、そして180度雰囲気を変えた住民との話合いとして、ワークショップ形式での話合いやファシリテーションの考えを提案したが、議員には不評だった。議会事務局の職員にはもっと不評だった。
しかし、感覚的にも経験的にも、コの字やロの字、教室形式といった対面式の机配置をやめて、机を給食形式の島合わせにして近距離で話し合う方が効果的なことは分かっていたし、議長に管理・制限されるような発言許可制ではなく、少人数グループをつくってフリートーク形式で話し合った方が効果的なことは分かっていた。
そこで、宿題がたまっていく一方の議会報告会をこのまま続けるか、正解が分からない議員間討議をこのまま続けるか、それとも思い切って新しい扉を開けてみるか、天秤(てんびん)にかけたところ、嫌々ではあったが、外部の知見を得ながら、ワールド・カフェ形式の話合いの進め方や、ファシリテーションスキルの研修を議員も議会事務局職員も受け入れてくれた。
研修は想像以上に好評で、ワークショップ形式とファシリテーションは実際の議員間討議と住民との話合いでどんどん取り入れられていくことになった。
筆者は、楽しくワイワイ話合いをするために、ワークショップ形式とファシリテーションを議会の現場に取り入れようとしたのではない。見せかけだけ楽しそうな話合いの雰囲気をつくるだけでなく、何か変化が加わることで話合いの質が変わること、そういう話合いの奥深さというものを楽しんでもらうことが、話合いを生業(なりわい)とする議員にとってこの先、重要だと思っている。
議員も議会事務局の職員も会議規則の呪縛から早く解放され、地域や住民生活にとって成果につながるような実質的な話合いを期待している。