3 議員間討議の正解とは?
しかし、昨今の議会基本条例の制定に見受けられるように、本来の議会の姿である議員間の“自由な”討議が重要視され始めている。これは会議規則が想定しているものではない。
筆者は、会議規則とは遡れば明治地方自治制度から存在する中央集権時代を背景にした、議会に話合いをさせないためのルールではないかとすら感じている。議会が話合いによって一つの意思を持つことは首長にとっては驚異であるし、そのため自由闊達(かったつ)に話合いが盛り上がってもらっては困るのである。
話を戻すが、会議規則が想定していないだけに、議員間討議の運用ルール(実施要領など)を定めている議会が多いが、誰も議員間討議が何たるかをよく分からないため、せいぜい質疑と討論の間に行うことや、その開始要件を定める程度になっている。
もしかすると、そもそも“自由な”討議であるので、運用ルールをつくろうとすること自体がナンセンスなのかもしれない。
そして、議員間討議と称して行ってみるものの、何度やっても一人ひとりの意見発表あるいは賛成・反対の討論になってしまう。どんな話合いができれば議員間討議なのか誰も正解を知らないのである。
4 暫時休憩中に議員間討議を発見する
議長には、会議規則にのっとった司会原稿(進行次第書)が議会事務局から手渡される。
しかし、司会原稿どおりに進まないことも間々あり、話合いが錯綜(さくそう)してしまったときには暫時休憩が入る。
休憩中の発言には管理・制限がなく、ざっくばらんに“自由”な話合いが進められ、錯綜していた原因や論点が整理され、話合いがまとまっていく。まとまったことを受けて会議を再開し、議事録上は何事もなかったかのように話合いを続行する。
これは実際の議会の現場ではよくある光景なのだが、筆者はこの休憩中の話合いこそ真の話合いであり、議員皆が肩肘張ることなく立場を離れて、本音で話し合っているように見えた。
また、この話合いこそが物事が決まっていく大事なプロセスであり、かつ論点で話されていることも多く、住民に公開されるべきだと感じていた。ここに議員間討議を発見したのである。
そこで、この休憩中のような雰囲気でできる話合いを会議の中で行うにはどうすべきかを考える中で、ワークショップ形式とその延長線上のファシリテーションに行き着いたのである。
休憩中に交わされるような本音で本質的な話合いがもっと活性化されれば、まちはよくなるとの確信もあった。大事なことは会議規則の外で決まっていくのである。