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特集 議会×ファシリテーション

2020.03.10 仕事術

ファシリテーションを活用して住民の役に立つ議会に(特集1)

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「議員間討議」における「ファシリテーション」

議会改革は今、「第2ステージ」に入っている。議会のありたい姿を定めた基本条例を制定した議会も900議会に迫り、「形式要件」は整ってきた。新しいステージでは、「実質要件」が求められている。つまり、地域課題を解決する議会、住民の役に立つ議会に変化しなければならない。そのためには「政策サイクル」を回すことが必要だ。「政策サイクル」とは、議会報告会等から政策のタネを拾い上げ、議員間討議を重ねて、政策型の議員提案条例や首長への政策提言等、住民福祉向上に寄与する政策に結びつけることである。そのサイクルを回す上で鍵になるのが、「議会報告会」や「議員間討議」における「話合いの質」をいかに上げるかである。前述のとおり議会報告会の運営は少しずつ良くなりつつあるが、これからの課題は「議員間討議」だと考えている。
 議員間討議がうまくいかない理由は、大きく二つに分けられると思う。一つは会場、設備等のハードの問題。もう一つは議員の意識やスキルなどのソフトの問題。両方とも広い意味でのファシリテーションに含まれる。まずハードの問題だが、議会の委員会室にホワイトボードや付箋などの設備や道具がない議会が多い。民間企業の会議室では、当たり前に準備されているものだ。特にホワイトボードは、議論が空中戦になり話が錯綜(さくそう)する状況を可視化する効果がある。話しやすい会場の配置、雰囲気も欠かせない。
ソフトの問題としては、何よりも審議は執行部との質疑応答という意識が議員に根強くあること、また、委員会を仕切る委員長に会議を運営するスキル、ノウハウが不足していることである。これまで委員長は、当選期数順によりなることが多かったと思う。つまり、委員会の議論を仕切ることができるか否かは、委員長の要件に入っていなかった。場慣れも必要だが、話合い、会議の議論が深まるように進行するファシリテーションの技術が委員長には求められる。「対話」の共通言語化も必要だ。議会は物事を決める場なので最後は「討論」だが、その前にどれだけ「対話」、「議論」できるかが最終的な決定の質に影響を与える。議会における「対話」とは、「事実」に対する各議員の意味付けを確認、共有するプロセスだ。「議論」とは、それを踏まえた全体像から問題、課題への対策を考えるものである。そして「討論」とは、最終的に物事を決める場面だ。しかし、議員は本能的にすぐ「討論」になってしまう傾向がある。議員間討議はルールなしの意見表明のトークショーではない。まずは「討論」と「対話」の違いをはっきりさせることがポイントだ。そして大前提として、事実を押さえて話合いに入ることが大切だ。思込みや憶測は要注意。「事実」と「意見」を分けることは、話合いを整理していくためにも大事な視点だ。
 議員間討議は基本的に委員会単位で行われるので、委員長のファシリテーションスキルが必須だが、委員長をフォローする議会事務局職員にもファシリテーションスキルは必要だ。そんな議会事務局職員を筆者は「裏ファシリテーター」と呼んでいる。高校生との意見交換会で手応えを感じた柴田町議会では、新総合体育館建設のテーマで、ワールド・カフェにより、執行部に対する質問事項、論点の抽出を行った。その後の議員間討議のプログラムは議会事務局職員と筆者とで考え、建設への賛否は述べず、じっくり対話を行うことを意識し、議会事務局職員がホワイトボードで議論を可視化して整理しながら進めた。議員と議会事務局職員による「チーム議会」の取組みである。
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柴田町議会のワールド・カフェによる議員間討議

議会における「ファシリテーション」の可能性

 「議会改革第2ステージ」の要諦は、議会報告会を前向きな場にして、議員間討議で対話を積み重ねる議会になれるかどうかである。その際には議員、議会事務局職員双方にファシリテーションスキルが求められる。ファシリテーションを活用して住民の役に立つ議会になれるかどうかが問われている。議会報告会の改善の処方箋の一つは、対面式からワークショップ形式に変えることだ。全国の議会での実践が証明している。しかし、議員間討議がうまくできている議会はまだ少ない。議員間討議におけるファシリテーションの正解は筆者にもまだよく分からない。今後のさらなる実践を通して、理論化と議論のテンプレートのようなものが生み出せればと考えている。引き続き、現場の議員や議会事務局職員の皆さんとともに汗をかき、知恵を出し合っていきたいと思っている。

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