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特集 議会図書室改革の到達点

2019.12.25 議会図書室

田原市議会の議会図書室改革の取組み(特集4)

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議会図書室整備前 議会図書室整備後

中央図書館の行政・議会支援サービス~中央図書館からの目線~

(1)「議会支援」に至る経緯
 平成26年12月、議会事務局職員より「議会図書室は、図書室としてほとんど機能していないから改善に協力してもらえないか」という相談が中央図書館に寄せられた。このことが、議会連携を始めるきっかけとなった。打合せの際に実際に見せてもらった図書室は、書架が壁の一面にしかなく、図書室というよりは会議室のつくりになっていた。棚に入らない資料は戸棚の中や机の上に大量に置かれており、事務局職員もどこにどのような資料が保管されているのか把握できておらず、必要な資料を探し出せない状況だった。このとき、図書館が実施している、市役所の職員を対象とした「行政支援サービス」を使って、調べものの援助や資料の貸出ができることを紹介したところ、「図書室の整備だけでなく、調査などもお願いしたい」という話になった。
年が明け、図書館の担当者2人で議会図書室の資料をチェックし、不要な地域資料や複本については、図書館で譲り受け、図書館資料として登録をした。図書室の資料配置については、議員や事務局職員の動線などを考慮し、事務局担当者と相談しながら決めた。また、可能な範囲で図書館所有の見出し板やブックエンドを提供し、図書室の整備に活用してもらった。
 図書室が整理されたことにより、以前の「資料のある会議室」から本来の「議会図書室」として認識されるようになった。これを機に、具体的な支援内容について双方で話合いを重ね、「行政支援サービス」の運用を生かした議会支援を開始することになった。

(2)具体的な取組み
 ア 議会支援サービスの試行
 平成24年4月に「行政支援サービス」は始まり、平成28年度に「議会支援」が本格実施に移行するタイミングで、「行政・議会支援サービス」に名称を変更した。
現在、実施している「行政・議会支援サービス」では、①レファレンス(調査の援助)、②資料の複写、③資料の貸出(団体貸出)、④政策・イベント等のPR展示のほか、今年度からは市内小中学校の教員や学校司書への調査支援が新たに加わり、5種類のサービスを提供している。申込書に記入し、メールやFAXなどで図書館へ送付するとサービスを受けられる。
 平成27年度、「議会支援サービス」を試行で開始した。「議会支援」は「行政支援サービス」の枠組みの中で始まったため、サービス内容や受付けから回答までの流れは、基本的に「行政支援サービス」と同じになる。この年、議会図書室の資料購入費が十分でなかったため、「資料の貸出」から取り組むことにした。主に定例会や一般質問に沿った資料や、調査で必要な資料を「団体貸出」(貸出期間60日、最大300冊まで貸出可能)で提供している。試行開始時は、改選の時期と重なったこともあり、議会活動や議会・行政の仕組みに関する資料を貸出した。貸し出された本は、議会図書室に置き場所をつくり、議員や事務局職員が自由に借りられるようになっている。
 年度末には、双方の担当者で1年間の連携内容をまとめ、課題について話し合い、次年度に向けて計画を立てた。また、「連携マニュアル」を作成し、双方の担当間で共有を図った。これらは、毎年継続して行っている。
 議会支援サービスに取り組むに当たり、連携の窓口担当を図書館と議会事務局から各1人選び、スムーズにやりとりができるようにした。定例会の時期に定期的な貸出や調査を行うなど、議会独自の条件やニーズに合わせて「行政支援サービス」を議会向けに改良していった。

 イ 議会支援サービスの本格実施
 平成28年度、本格実施に移行し、「レファレンス」への取組みもスタートした。主に、行政視察先の情報や先進事例、議会活動に関する調査依頼を受けている。回答資料は、図書、新聞記事、雑誌論文、インターネット情報が中心となる。必要に応じて、各地域の図書館や自治体へ調査依頼も行っている。先進事例の調査などは図書として出版されていないケースが多く、雑誌・新聞記事やインターネット情報が中心になる。貸出資料には「団体貸出」で対応し、新聞記事は複写物を提供し、インターネット情報は発信元や更新日を確認して信頼できる情報を選び、リンク集を作成している。提供したリンク集は、議会事務局が内容を精査して議員のタブレットに配信している。
 3月には、「レファレンス事例集」を作成し、議員の共有タブレットに配信した。これは、過去に受け付けたレファレンス調査の中から、テーマを幅広く選んでまとめたもので、調査を依頼する際の参考にできるように作成した。
 このほか、議会図書室の購読雑誌のバックナンバーを譲り受け、図書館資料として登録を始めた。譲り受けた雑誌は、図書館のホームページからキーワードで検索ができるように、雑誌の特集記事を入力して探しやすくする工夫をした。

 ウ その他の取組み(展示・イベント)
 平成29年度から、展示への取組みも始めた。「写真でみる田原市議会」と題した展示では、議会事務局から借りた議会・議員の活動写真と関連資料を組み合わせて行った。図書館公式のフェイスブックやツイッターでもPRをした。写真を多く使ったことで目を引く展示になり、多くの来館者が足を止めて見てくれた。昨年度は、液晶パネルを設置し、写真をスライドショー形式(約12分)で映した。今年度は、議員のプロフィールやお勧め本を加えた展示内容になっている。
 令和元年8月には、市民と議員が田原市の様々な課題について自由に意見を交換する「図書館で議員と語ろうホリデー」を開催した。以前より議員の皆さんから「幅広い年齢層の市民から意見を聞く機会を増やしたい」という話を伺っていたこともあり、図書館から提案をした。事前の打合せでは「服装はスーツではなくカジュアルに」、「途中参加や途中退場にも対応する」など、来館者が気軽に参加できる雰囲気づくりのための話合いを行った。今後も議員と議会事務局と連携して様々な催しに取り組んでいきたい。
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令和元年「写真でみる田原市議会」展示の様子

中央図書館の支援を受けて~議会事務局からの目線~

 団体貸出で、時事ネタ・話題性のある図書や短期間だけ必要な図書等、議会で購入することが難しい図書を図書館から借りることができて助かっている。また、担当司書を選任してもらっているので、議会事務局との意思疎通がスムーズにでき、さらに、こちらが依頼したテーマ以外のものでも関連図書を随時貸し出してくれ、大変役立っている。
レファレンスでは、行政視察や所管事務調査事項の事前調査を中心に依頼している。図書館からの情報は豊富な上、知りたいことを代わりに調査してもらえるので事務局職員の負担軽減にもつながっている。
 平成29年1月には、「議員研修会」で議員・議会事務局・図書館の三者での合同研修を実施した。この中で、図書館司書から「行政・議会支援サービス」や図書館で活用しているデータベースの紹介を受けた。
 また、図書館で展示してもらった「写真でみる田原市議会」は、普段議会に接する機会がない人に議会・議員の活動を理解してもらうきっかけとなり、大きな反響があった。
令和元年は、図書館からの提案で中央図書館のオープンスペースを会場とした意見交換会「図書館で議員と語ろうホリデー」を開催した。約20人の市民と8人の議員が、テーマごとにグループに分かれて活発に話し合った。休日の図書館来館者をターゲットにして、議会報告会では参加の少ない女性や若い世代の参加も期待したが、残念ながら若い世代の参加者は少なかったため、今後の課題にしたい。
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意見交換会「図書館で議員と語ろうホリデー」の様子

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