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特集 議会図書室改革の到達点

2019.11.25 議会図書室

大津市議会の議会図書室改革 ~全国初の大学図書館との連携~(特集2)

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自治体内公共図書館との連携の是非

 大津市議会の大学図書館との連携は、先進事例として取り上げられ一定の評価も得たが、一方で自治体内部に公共図書館を抱えているのに、なぜ外部図書館との連携を優先するのかとの批判的意見もあり、ここで自治体内公共図書館との連携に関して私見を述べたい。

 地方議会における公共図書館との連携は、国会と国立国会図書館との関係をイメージして語られることが多い。だが、機構上、根本的に異なるのは、国立国会図書館は立法機関を補佐するために設置された組織だということである。つまり、国会議員が質問のためにレファレンスを依頼した内容を、国立国会図書館職員が政府側に漏らすことは制度上ありえない。一方、公共図書館は執行機関の組織であるため、図書館職員は首長の指揮命令下にあり、議員のレファレンス依頼内容が首長に伝わる可能性を制度的に排除することはできない。

 同様の疑念は、議会事務局への法制担当職員の配置に関しても、すでに議論の対象となっている。本来は法制担当職員も議会事務局に選任配置すべきであるが、それができない中小自治体では、執行部の法制担当職員を議会事務局職員として兼務発令したり、事実上の行為として議会提案条例案を調製させているところも多い。だが、このような状況では議案上程される以前に、執行機関側の都合に合わせて議会提案条例案が修正されてしまう弊害が指摘されている。

 組織人である職員の立場をおもんぱかれば、兼務発令がなければいうまでもなく、本務と兼務の立場が競合する場合でも、本務を優先した事務執行をするのは立場上当然である。二元的代表制の制度上、兼務発令すること自体に矛盾があり、執行機関優先の執務態度を批判するのは筋違いであろう。

 図書館の話に戻せば、司書には議会事務局職員への兼務発令さえ行われていないことが大勢である現状に鑑みれば、首長に忖度(そんたく)したレファレンスが行われ、その情報が首長に伝えられる可能性を完全に排除するのは困難と思われる。

 もちろん、現実に情報がリークされることはレアケースであろうが、制度設計は常に最悪の場合から想定して行うべきであり、大津市議会が大学図書館との連携をより重視するのは、それが執行機関から独立した図書館であることが大きな理由の一つである。

成果と今後の方向性

 現時点までにおける議員の大学図書館の利用実績は、蔵書の貸出しを受けた上でテーマを絞り込み、一般質問作成のプロセスにおけるレファレンスサービスを受けるという利用形態がその多くを占めている。だが、その利用実数自体がまだまだ少なく、利用する議員も限られていることが当面の課題である。

 やはり、議会と大学図書館の地理的距離や、現状では大学図書館司書はあくまで依頼を受けて動く立場にあり、議会のために主体的に発信する、いわゆるプッシュ型支援を行いえない関係性にあることは、司書を直接雇用している議会図書室と比較して不利な部分である。その意味からは、司書配置はいつかは越えるべき一線でもあろうが、資格がその人の専門分野における能力を保証するものでない現実からは、全体人数が少ない中小議会事務局で、人事上の再配置が困難な専門職を独自雇用することは、大きな賭けと感じられるのも事実である。

 900人近い職員を擁し190億円近い予算を持つ国立国会図書館はもちろん、都道府県議会の議会図書室の感覚からは、わずか1人の司書を雇用する予算や定数枠に躊躇(ちゅうちょ)する感覚は不思議に感じられるかもしれない。だが、戦力の分散配置は各個撃破されやすく全滅を招くというのが戦術のセオリーであり、多分野における議会改革や政策立案を支援している大津市議会局で、総数17人(嘱託職員含む)分の1人のマンパワーを、他分野での増員要求に優先して、導入効果を定量的に示すことが困難な分野に投入することは厳しい決断である。

 呉市議会図書室改革の成功は、庁舎移転の時期に合致し、白紙から議会図書室を整備できたことのほか、何より有能な司書を採用できたことが大きな要因と分析しており、単に司書を配置すれば全て解決するというものではないと私は受け止めている。また、大学図書館との連携関係確立で、改めて仕事は人次第と感じさせられた経験からも、有能な司書をスカウトできるようアンテナを張りながら、当面は議員にレファレンスを利用することの価値を実感してもらえるよう、大学図書館との連携を深めていきたい。

 *文中、意見にわたる部分は私見である。

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