地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

特集 議会図書室改革の到達点

2019.11.11 議会図書室

地方議会図書室による政策形成支援(特集1)

LINEで送る

4 未来への投資

 代表的な事例への評価に基づけば、議会図書室を起点とした文献調査は、他の議会でも議員の調査研究に役立つといえそうである。今後、ビッグデータの活用と仮説検証によって政策の精度を高めるEBPMのような手法が導入された場合でも、複数の情報源からデータ的な裏付けを得たり、先行事例に対する評価・分析を行うことは必須であるから、やはり文献調査は有効と考えられる。
 さらに、田原市、呉市の事例からは、図書館による議会支援と行政支援に共通性があることも分かる。議会図書室を、自治体必置の「政策形成専門図書館」と捉えれば、その資料とノウハウは、執行機関職員を含め、広く政策形成に携わる人々に役立つだろう。この点で議会図書室は自治体の政策形成の質的向上に大きく貢献する可能性を秘めている。
 もちろん課題は存在する。繰り返し述べてきたように、議会図書室活用のメリットが知られていないことが大きい。呉市議会図書室の活動は複数の受賞歴(9)を持ち、地方議会及び図書館双方の関係者の注目を集めたが、これに続く新たな取組みが生まれることが望まれる。さらに、司書の確保を含めた資料費・運営費の問題も無視できない。しかし、ある程度のコストを覚悟しても、良質な政策が形成され最終的に住民福祉に寄与するのであれば、議会図書室の整備は「未来への投資」としてきわめて有望だと考えられる。

※本稿における意見は私見であって、筆者の所属機関の見解を示すものではない。


(1) 例えば神奈川県では、県政の重要課題を調査・分析する政策研究センターがEBPMを取り上げ、その成果は報告書「『根拠に基づく政策運営』(Evidence-based Policy Making)─EBPMの基本的な考え方と自治体の今後の対応─)」(http://www.pref.kanagawa.jp/docs/r5k/cnt/f7282/documents/centerresearchebpmrevised.pdf)にまとめられている。
(2) 例えば同志社大学が公開している「条例Webアーカイブデータベース」によれば、全国の議会基本条例897件のうち、議会図書室について規定しているものは587件(全体の65%)に上る。
(3) 井上明彦「特集 使える議会図書室とは:都道府県・政令市・県庁所在市調査 レファレンス機能の強化、公立・専門図書館との連携カギ」日経グローカルNo.261(2015年2月2日)10〜 21頁。
(4) 西尾恵一「政策立案支援サービスの現状と課題」図書館雑誌110巻8号(2016年8月)478〜 479頁。
(5) 課題解決型サービスの実施状況は、全国公共図書館協議会「公立図書館における課題解決支援サービスに関する報告書」(2016年3月)(https://www.library.metro.tokyo.jp/pdf/zenkouto/pdf/2015all.pdf) に示されている。
(6) 清水克士「大津市議会図書室の【現在】【過去】【未来】」図書館雑誌110巻8号(2016年8月)476〜 477頁。
(7) 柴田典子=七原千紘「議会図書室の機能強化で議会力アップ:田原市議会」地方自治職員研修2018年2月号40〜 42頁。
(8) 重森貴菜「『強い議会』を支える『使える』議会図書室をつくる」地方議会人2019年4月号27〜 30頁。
(9) 2016年度にはマニフェスト大賞優秀成果賞を、2018年度には地方創生レファレンス大賞(文部科学大臣賞)を受賞している。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る