「熱を持ったしなやかな土台の厚み」が地域の「稼ぐ力」となる可能性
ところで、先に「『熱を持ったしなやかな土台の厚み』が、地域の『稼ぐ力』の可能性に関わっている」と述べた。この点について説明する。
筆者は2018年度に全国の500人程度を対象にアンケートを行った。「あなたが自ら住む地域を知人友人に推奨する意欲はどの程度ですか」を10から0の選択肢で尋ね、併せて、問1「あなたは地元産品を購入したいと思いますか」、問2「あなたは地元に働く場があれば地元で働きたいと思いますか」という質問を行った。
まず問1から見ていこう。最初の問いに10・9・8と答えた、地域を推奨する意欲の高い人の30%は「地元産品のほうが他の地域の産品よりも少し高価でも地元産品を選ぶ」と答えている。また、50%の人が「地元産品と他の地域の産品が同じ値段なら地元産品を選ぶ」としている。合わせて80%の人が地元産品を優先していることが分かる。
一方で、最初の問いに5以下と答えた人について見てみる。こうした地域を推奨する意欲の低いあるいは否定的意見を述べる人の38%は「地元産品であるか他の地域の産品であるかは気にしない」とし、「地元産品は選ばない」との回答も20%ある。合わせて58%が地元産品に否定的な答えを行っている(図4)。
図4
次に、問2について考える。最初の問いに10・9・8と答えた、地域を推奨する意欲の高い人の53%は「地元に働く場があれば、他の地域で働くことは検討せず地元で働きたい」とし、「地元の働く場と他の地域の働く場の条件を比較し、他の地域の条件が地元よりも十分によいときに限り、他の地域で働きたい」と回答した人は35%であった。合わせて88%が地元志向ということになる。
これに対して、最初の問いに5以下と答えた、地域を推奨する意欲の低いあるいは否定的意見を述べる人の19%が「地元に働く場があっても他の地域で働きたい」と回答している。「地元の働く場と他の地域の働く場の条件を比較し、他の地域の条件が少しでもよければ、他の地域で働きたい」という人も27%いる。合わせて46%が地元を志向しないことが分かる(図5)。
図5
これらからは、地域推奨意欲を計測することで、地元産品の購入意欲や地元での就業意欲の程度が確認できることが分かる。つまり「地域の稼ぐ力の可能性」を示している数値であるということができる。まさに地域を形成する「熱を持ったしなやかな土台の厚み」を測ることができる指標であると考えられる。これ以外にも地域推奨意欲や後ほど述べる地域参加意欲、地域感謝意欲が、様々な地域への関与の意欲や実際の行動に関わっていることは、アンケート等により明らかになっている。
ライクヘルドのNPSを修正する意義もここにある。ライクヘルドのNPSと、mGAPで用いる修正NPSを比べてみると、修正NPSのほうが地元産品の購入意欲や地元での就業意欲との相関が強いことが得られている。そのためにも、あえてライクヘルドのNPSを修正している。