6 新たな政策サイクルへ
飯田市議会は、令和元年5月に開催された臨時議会において委員会条例を改正し、同時に予算決算委員会運営要綱を策定して予算決算委員会が始動した。分科会のほかに、分科会座長や各会派の政策代表者等からなる委員会準備会を置き、委員会の準備や各種の調整を行うこととした。また、準備会での調整により、議案審査や行政評価では、複数の分科会による連合会議を柔軟に開催することとした。さらに当地域の重要な課題である「リニア中央新幹線計画」に関連する事項については、リニア推進特別委員会の専門性を生かすため、当該委員会委員からなる分科会と産業建設分科会との連合会議を開催することができるものとした。いずれも課題の内容に応じ、柔軟な対応が可能になることを意図している。
行政評価により政策・施策レベルのチェックを行い、続いて決算審査で事務事業のチェックを行う。その過程で集約した意見は、「議会からの提言」として執行機関に提出する。執行機関の予算決算の説明は、事務事業をベースに行われ、早急に対応すべき事案については、次年度を待たず補正予算で対応することとしている。
予算決算委員会の設置目的は、議会意見の予算への反映や、議会による政策提言の取組みを進めることに重点を置いている。これまで決算審査は、どちらかといえば「終わったこと」に対するものと見なされてきた。しかし予算編成権を持たない議会は、予算審査の段階ではできることが限られる。行政評価や決算審査を通じて形成した議会の意思を、予算編成作業のタイミングで執行機関に提示することが重要だと考えている。
昨年度から市内7ブロックで開催している議会報告会は、自治組織(まちづくり委員会等)と共同開催していることもあり、延べ600人を超える市民の参加がある。毎回分科会ごとにテーマを設定し、活発に行われる意見交換の中から地域課題を抽出し、常任委員会において調査研究を行い、政策提言につなげている。
今後は、議会報告会を起点とした政策提言の取組みと、行政評価から予算決算審査に至る取組みとの連携をどのように図るかが課題となる。また、議会の提言や意見が「予算や政策にどう生かされたか」を確認しながら、この政策サイクルをさらに進化させていかなければならないと考えている。
7 おわりに
結局のところ自治体議員の役割とは何か。それは、執行機関の行政実務から発想する政策、施策、事務事業に対して、市民目線からのセカンドオピニオンを示すことにある。この両者を議会の場で議論して止揚し、その過程を市民に提示することが求められる。それが、多くの犠牲と歴史を経て我々が手にした議会制民主主義というシステムを、次世代に引き継いでいく唯一の道であるように思う。
飯田市議会の新たな政策サイクルは、始動したばかりで、その実績をここで語ることはできない。走りながら考え、今後改善していかなければならない部分も多い。しかし今後も改革の歩みを止めず、住みよいまちづくりのため、その責務を存分に果たす議会を目指したい。
※ 屋上屋論:「予算決算委員会を設置しても、結局内部に分野別の分科会を置いて審査を行う必要があり、『屋上屋』ではないか」との意見。