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特集 2019年統一地方選挙

2018.11.12 文書図画

政策ビラ(マニフェスト)の解禁が議会選挙の文化を変える

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早稲田大学マニフェスト研究所事務局次長/招聘研究員 青木佑一

 また政策型選挙の実現に向けて、条件整備が進んだ。
 「政策ビラ(マニフェスト)の頒布」が、2019年春の統一地方選挙から町村議会を除く議会議員選挙でも解禁される。早稲田大学マニフェスト研究所では、解禁を翌春に控えて、有権者意識調査を実施した。その結果を参照しながら解禁の意義や作成・活用のヒント、政策ビラのあり方について述べてみたい。

首長選挙マニフェスト解禁から12年遅れで導入

 地方議会議員選挙での政策ビラ解禁は、先行導入された国政選挙からは16年、首長選挙からは12年遅れての実現となった。このこと自体が、国が地方政治を執行部中心に考えている証左でもある。
 マニフェストの導入に際しては、「お願い」になりがちだった選挙公約を国民との「約束」とし、「情実」で動いている政治文化を選挙での「契約」によるものに変えていくことが期待されていた。
 地方政治でいえば、二元代表制のもとで議会と首長が、あらかじめ提示された政策の実現に向けて市政を運営することにより、政治が信頼を積み重ねられるようになること、そして有権者が提示されたマニフェストをもとに選挙で投票先を検討し、適切な投票判断をするための有効な情報となるため、政策を中心とした政治文化の実現は有権者起点の政治の実現につながるだろう。
 政治へのマニフェストの導入は、政治や有権者の意識を間違いなく変えた。しかしそれ以降、民主党のマニフェスト政治の失敗や「うそつき」、「詐欺フェスト」などといわれるなど死語化が進み、全政党が取り組んでいた国政選挙でのマニフェスト提示も徐々に提示されなくなっている。マニフェストは死んだのだろうか。
 筆者は、マニフェストという言葉は使われなくなっても、その根底にある考え方や理念は死んでいないと考える。地方政治、特に首長執行部ではPDCAサイクルをもとにした行政運営は逃れられないものとなっている。「あれもこれも」できていた行政運営も、財政状況の悪化により「あれかこれか」の選択が必要になる中で、選挙において理念と優先政策を提示するマニフェストの導入は、首長選挙において標準装備となっている。
 また、選挙においては候補者情報の不足が進んでいる現状がある。財団法人明るい選挙推進協会による「第18回統一地方選挙全国意識調査」によると、「地方選挙で候補者の人物や政見がわからず、誰に投票したらよいか困る」との回答は、1979年の統一地方選挙からほぼ一貫して上昇を続け、とうとう2011年調査では50%を超えた。そして、道府県議会議員選挙や市区町村議会議員選挙での同回答は6割程度となり、首長選よりも高くなっている。インターネットによる情報発信が存在感を増しているにもかかわらず情報不足が加速している現状は、有権者側の変化に社会や政治側が応えられていないことを表している。
 前記意識調査報告書でも「地方選挙における候補者情報の不足は大きな問題として定着しつつある」と指摘しており、少なくとも今のやり方を変えなければならないだろう。
 そうした現状の中、私どもが事務局を務めているローカル・マニフェスト推進地方議員連盟(現・ローカル・マニフェスト推進連盟)では、2016年に「地方議会議員選挙におけるマニフェスト解禁についての要望決議」を全会一致で採択し、プロジェクトチームで各政党への要望活動と全国議会での意見書提出を呼びかけ、全国15議会で意見書が採択された。
 その後、2017年6月に公職選挙法が一部改正され、都道府県議会議員選挙と特別区を含む市議会議員選挙において選挙運動用ビラの頒布が2019年3月1日から解禁されることとなった。
 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会での議論では、政策ビラ頒布を「有権者が候補者の政策等をより知る機会があることは、選挙において有権者が適正な判断を行い、投票行動に生かすことができるなど、参政権の行使にとって重要」と位置付けている。

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