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2018.10.10 リーガルマインド

岡山弁護士会における議会事務局と弁護士との連携に関する意見交換会を経た提言

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帖佐弁護士のご講演

 流山市に任用された当初(平成23年4月1日)から、総務部総務課と議会事務局とを併任していらっしゃいますが、その背景には、行政部局側において弁護士を任用するに当たり、議会側にも同様の必要性があるとの意見があったとのことです。
 議会事務局での業務として、次のようなものを挙げられました。
 ① 地方議会の運営は慣習による側面が大きいが、その慣習が地方自治法等の法令に照らして妥当なのかについて相談を受け、文献を調査して回答している。
 ② 議会が市民に対し情報を発信する機会が増える中、他者が著作権を有する著作物に関する相談や、業者との委託契約における守秘義務の定め方等に関する相談を受け、助言をしている。
 しかし、現状では、議会事務局からの相談(相談記録を残しているもの)は年に数件程度であり、流山市では、行政部局とは別に議会事務局単独で常勤の弁護士を配置するまでの必要性はないとのことでした。他方で、議会事務局からの相談には、行政部局提案に係る条例案の法令適合性等、行政部局の職員として相談を受けるのがふさわしくない相談もあるため、行政部局との併任では対応しきれないことがあるのも事実だと問題提起をされました。

意見交換会

 議会事務局に期待される法務能力は何か、及び議会事務局の法務能力を弁護士がどのようにサポートすべきかについて、意見交換がなされました。議会事務局職員側、弁護士側それぞれの意見を、下記のとおりまとめました。
 まず、議会事務局職員からの意見を紹介します。
 ひとつの自治体の議会事務局では、政務活動費の支出の可否や議員提案に係る条例案の法令適合性を検討する際に法務能力が求められるが、前者については弁護士を講師に招いて研修会を行うことで足り、後者については行政部局の法制担当職員に事実上聞くことで足りるため、具体的な弁護士活用の場面が見えないという話がありました。他方で、他の自治体の議会事務局からは、政務活動費の支出の是非をめぐる裁判へ対応する過程で、弁護士の助力を継続的に受けており、その結果、平成29年度から議会事務局と弁護士とで顧問契約を締結することになった事例が紹介されました。議会事務局が弁護士の助力を受けることによって業務が円滑に進むとともに、これまで気付かなかった法的問題の掘起しにも役立つと思うとのご意見を語っていただきました。
 また、別の小規模な自治体の議会事務局では、常勤の弁護士を置くまでの必要性は感じないとのことでしたが、政務活動費の支出の可否等について弁護士や公認会計士の意見を聞く必要があると感じることは一定程度あるとのことで、何らかの形で弁護士の助力を受けるのが有益であろうとの意見が出されました。

 これに対し、弁護士側からは、弁護士は単に議会事務局の助力にとどまらず、議員が活動するに際してのシンクタンク的な役割も担うことができるといった提案が上がっています。
 現状では、議会事務局が問題だと認識した事案を弁護士に相談しているといった連携にとどまっていると思われますが、そもそも問題だと認識されず見過ごされてきた法的問題を発見することも弁護士には可能です。
 議会が市民の思いをくみ取り、行政部局とは異なる視点からの提案や提言を行えば、よりよい施策が実現されます。そのためには、議会と適度な緊張関係を保ちつつも議会の提案や提言を積極的に取り入れるよう首長の意識が変わることが必要であると考えられます。また、議会には行政運営を統制する役割が期待されていますが。これらの変革や統制を実現するには、弁護士の能力を役立てることが必要であると考えられます。
 大規模な自治体の議会事務局だけでなく、小規模な自治体の議会事務局の意見を聞くことができたのは有益で、今後は、一つの小規模な自治体の議会事務局だけでは弁護士と顧問契約を締結する必要性が高くないとしても、複数の小規模な自治体の議会事務局が共同して特定の弁護士と顧問契約を締結する等の工夫ができないかについても議論できるのではないかと考えています。

 

所感

 今回の意見交換会は、まず議会事務局と弁護士とで、議会事務局と弁護士とが連携するに際しての問題点を見つけ、問題意識を共有することを主眼に置いたものでした。岡山弁護士会では、今後も定期的に議会事務局と弁護士会とで意見交換を行う場を積極的に設けていく予定です。
 また、今回の意見交換会は、3月議会の繁忙期を避けて2月上旬に開催しましたが、議会の委員会対応等のため参加できない自治体が多くなってしまいました。そのため、今後は、案内の時期を早めたり、参加可能な日時について事前にアンケートをとるなどの工夫を行い、議会事務局側からより多くの方が参加できるようにし、弁護士が議会事務局を支援していく仕組みの検討を続けていきたいと考えています。
 今回の意見交換会を通じて、議会事務局の業務に弁護士がより関与するのが望ましいと感じました。
 たしかに、議会事務局が弁護士に相談を求める機会は多くないかもしれませんが、弁護士が法的問題を掘り起こせば、議会事務局が弁護士に相談すべき事案もあるように思います。
 また、現状では、行政部局側の弁護士に相談すべきでない事案についても行政部局側の弁護士に相談がされていることがあるように思います。
 これらのことからすると、行政部局の業務だけでなく、議会事務局の業務にも別に弁護士が関わっていくことが、二元代表制に基づいた地方自治の実現に寄与するように思います。

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