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2018.09.25 議員活動

議員提案条例の制定が議員のリーガルマインドを高め議会力をアップする

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横浜市会議員 黒川勝

議会がチカラをつけるための手法としての議員提案条例

 横浜市会では、2010年に議員提案による政策的な条例が初めて成立、制定されて以来、これまでに16本の議員提案による条例の制定や既存の条例の全部改正がなされ、毎年数本の議員提案条例が制定されています。
 議員提案条例の制定には、条例案が法律に照らして問題ないか、条例として不可欠な条文をきちんと整えているかのチェックや、類似する他自治体の条例との比較検討など、詳細な部分については事務方としての議会局政策調査課の協力が不可欠です。
 また、その内容に関係のある市民団体や関心の高い人たち、業界団体等との意見交換などを通じて、そのまち独自の特色を持った条例をつくることができれば、市民からの信頼を得ることができ、同時に、そのまち固有の課題の解決につながります。
 さらには、議員提案条例に基づいた政策を執行部が打ち出したり、条例に規定された課題解決に必要な部署や会議体等が新たに設置されれば、まさに議会からの政策実現が可能となるのです。そして何よりも、議員提案条例の制定に携わった議員は、その条例に関する政策のエキスパートとなります。
 地域に根差して地域の声を生かしつつ公平で公正な条例を策定するには、柔軟かつ的確なリーガルマインドも必要となります。加えて条例として成立させるためには最低でも過半数の賛成、できれば全会一致を目指すという議会内での政治力も不可欠です。
 最初の議員提案条例の制定から9年間、横浜市会では、議員提案による条例の制定を通じて議員力と議会の政策実現力が高まると同時に、執行部や市民との連携も強まり、市長と対等の二元代表の一翼を担っているという自覚が議会全体に芽生えてきたと実感しています。横浜市会が歩んできたこの9年間で議会がどう変わったか、条例に基づいた政策の実施というリーガルマインドが議会・行政・市民にどう浸透してきたかについて、現在でも発展途上ではありますが、紹介させていただきます。

地方自治体を取り巻く環境の変化

 私たちの取組みのスタートは、今から10年前に遡ります。当時の地方議員のイメージは──今もあまり変わっていないのかもしれませんが──名誉職的な仕事であり、何をしているのかよく分からないといったものでした。マスコミに取り上げられるのは不祥事や事件が起きたときぐらいで、議会が市民から信頼されているとはとてもいえず、地方議会や地方議員は本当に必要なのか、という声さえ聞かれました。
 しかし、2000年に地方分権改革一括法が施行されて以降、地方自治体の役割は大きく変わりました。国から委任された事務、いわゆる「機関委任事務」を国の出先機関であるかのように粛々と実行する役割から、住民の福祉の増進を図るために、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うようになったのです。
 地方制度調査会などを通じて地方自治体のあり方が議論されるようになり、2016年の第6次地方分権改革一括法が施行されるまでに、国と地方の関係は「上下・主従」の関係から「対等・協力」の関係へと変化し、国や県から政令市や基礎自治体に対し、様々な権限や財源が移譲されるなど、地方に対する規制緩和が進みました。
 当時の言葉でいえば「地域主権」、最近では「地方創生」という言葉に象徴されるような、地方からの改革を地方自治体が独自に進められるように制度が整いました。しかし、今でも「国にお伺いを立てる」、「他都市の動向を踏まえながら取り組む」といった体質が行政職員には感じられます。もちろん、憲法や法律に反することはできませんが、だからこそ、住民から選挙で選ばれ、地域の実情を熟知している地方議員が、国・県・市町村という昔ながらのヒエラルキーにとらわれることなく、その地域にふさわしい独自の政策を発信する役割を担う必要があるのです。
 制度が整うとともに、議員や議会による政策実現の手法も変化してきました。横並び、金太郎あめといわれた政策から、その地域の独自性に合わせた様々な政策が、限られた財源の中、自ら問題意識を持って地域の課題を抽出し、それを解決する政策を打ち出すことのできる議員から提案されるようになりました。
 横浜市会では、議員提案条例に見られるように、条例制定によって、議員から発案された条例にのっとった政策の実行を執行部に迫り、執行部がそれを実行する流れができました。それにより、議員の質的な向上が図られるとともに、政策立案から実施に向けた流れが透明化され、議会の役割も行政のチェック機能から政策を実現することへと変化してきました。

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黒川勝(横浜市会議員)

この記事の著者

黒川勝(横浜市会議員)

横浜市会議員(三期)。成城大学文芸学部文化史学科卒業。横浜青年会議所理事長、横浜スタンダード協議会理事長、ローカルマニフェスト推進地方議員連盟共同代表、マニフェスト大賞実行委員会委員長。

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