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特集 自治体議員とリーガルマインド

2018.09.25 リーガルマインド

議員提案条例の制定が議員のリーガルマインドを高め議会力をアップする

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よこはま自民党の政策実現手法

 横浜市会初の議員提案条例は、2010年に制定された「横浜市中小企業振興基本条例」でした。当時は、横浜市の発注する事業や役務、物品調達は、世界中から誰でも応札できる一般競争入札で行われており、結果として無理な金額での落札による手抜き工事や低品質につながる懸念がありました。
 それに対し、横浜市の発注する事業や役務、物品調達は横浜市内の事業者が受注すべきという方針に転換することを定めたこの条例は、筆者が属するよこはま自民党の提案によるもので、自民・公明・民主・共産・無所属すべての議員が賛同し、全会一致で成立しました。
 当該条例の制定によって、政府調達(WTO)契約案件や特殊な業者にしか委託できない案件を除いて、横浜市が関わる事業や役務、物品調達は横浜市内の事業者のみに発注されることになりました。この新たな発注方針によって、横浜市内での経済循環が生まれ、信頼できる地元企業によって適正な価格で確実な仕事が行われるようになりました。議員がつくり、議会で定めた条例によって、これまでの発注方針が大きく転換されたのです。こうして議会は、議員提案条例によって執行部を動かせることを学びました。

図1 よこはま自民党の政策実現の手法図1 よこはま自民党の政策実現の手法

 条例制定権は、首長にも議会にもあります。議会が策定する条例は、理念的な条例になりがちですが、選挙で選ばれた住民の代表である議員によって策定されたものとしてその意味は重く、制定されれば、条例に基づく政策を実行する責務が執行部には生じます。
 このように議員提案条例の効果に着目した私たちよこはま自民党は、前々回(2011年)の統一地方選挙において、議員提案条例制定の流れを一気に加速させようと、「責任と約束」と題した初のマニフェストを策定し、4年間で8本の議員提案条例制定を市民に対し責任を持って約束することを掲げました。
 この初めてのマニフェストが市民に評価されたのか、このときの選挙では、よこはま自民党の立候補者31人中、30人が当選しました(定数86人)。
 私たちがマニフェストで市民に約束した8本の条例は、以下のとおりです。
① 自治会・町内会の組織率を上げ、区役所が積極的に地域住民と交わり、地域のつながりを強化しようという「地域の絆をはぐくむ条例」
② 災害が発生したときに市民や企業、地域の団体などが助け合って生き残りを目指す「災害時自助・共助推進条例」
③ 児童相談所や警察、医療機関、保育教育機関、地域社会などが一丸となって虐待事件を未然に防ぐ「子供を虐待から守る条例」
④ 柔軟で持続可能な財政構造を構築し、必要な施策の推進と財政の健全性の維持との両立を図ることで将来にわたる責任ある財政運営の推進に資することを目的とした「財政責任条例」
⑤ 様々なステークホルダーが連携して総合的にがん対策を進め、がんの撲滅を目指す「がん撲滅対策推進条例」
⑥ 都市農業の振興や後継者の育成、近接する生産者と消費者による地産地消などに取り組む「都市農業・地産地消条例」
⑦ 県の条例からさらに踏み込んで横浜市独自の支援策や後継者の育成、にぎわいの創出を目指す「商店街振興条例」
⑧ 狭隘(きょうあい)道路の拡幅のためのセットバックを義務付けた「狭隘道路整備促進条例」
 このうち⑧「狭隘道路整備促進条例」は、個人の財産を保障する憲法との整合性が問われ、選挙の争点となることを避ける意味も含めて、4年間の任期が終わった翌年に成立させました。ですから、マニフェストの達成率としては8分の7、87.5%でした。
 また、議員提案条例の制定が、議員によるバラマキ政策を助長するという批判を避けるため、横浜市の財政に対して市長は責任を持って財政運営の目標を議会に示すことを定めた④「財政責任条例」を制定し、市財政の赤字化や借入金の肥大化に歯止めをかけています。

表 よこはま自民党がマニフェストで約束した8本の条例はすべて成立表 よこはま自民党がマニフェストで約束した8本の条例はすべて成立

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