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特集 自治体議員とリーガルマインド

2018.09.10 リーガルマインド

自治体議員のリーガルマインドを考える

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3 議会の行政監視とリーガルマインド

(1)議会の監視機能とその重要性
 議会には、首長の行政運営を監視し、チェックすることが求められていますが、どのような制度で監視機能を担保しているのでしょうか。通常の議会での議論のほかに、地方自治法では、事務の検査権(法98条1項)、監査請求権(法98条2項)、調査権(法100条1項)、公社等の経営状況報告(法243条の3第2項)、特定の役職者の人事への同意権(副知事、副市町村長について法162条など)、首長に対する不信任(法178条)などの制度が用意されています。また、自治体によっては、政策評価条例を制定し、政策の進捗状況を議会に報告したり、条例の規定を独自に設け、総合計画等を議決事項に追加したり、各種分野別の計画の進捗状況を議会に報告させる等の制度を有しているところもあります。
 これらは、首長の行政運営が適正に行われるよう、議会の行政監視を実効性あるものとして機能させるために制度化されているものと見ることができます。準備されている監視ツールを十分に活用していくことが、議員、議会には求められます。

(2)議会の監視機能を高める方法
ア 既存制度の活用
 議会の監視機能を高めるひとつの方策として、地方自治法等に定められた既存の制度を使って情報収集・調査し、議案についての質疑等でチェックする方法があります。
 (ア)報告
 地方自治法では、出資法人等の経営状況報告、監査委員からの監査や決算意見書の報告、会計管理者からの現金出納検査結果などが議会に報告されることになっています。これらは、議会に報告することにより、住民に広く公開されるとともに、住民の代表である議員が内容について適正かどうかチェックすることが期待されています。普段は何げなく議場で配布されるので無関心になりがちですが、特に決算意見書などは、会派等で分担し、過去の年度との比較、新たな項目の精査など、法的に見て適正に事務が行われているか、よくチェックし、不明事項があれば議会で質問することが大切です。
 (イ)検査、調査
 また、事務の検査権(法98条1項)、監査請求権(法98条2項)、調査権(法100条1項)などの権限が議会には付与されていますが、これらは議員個人の権限ではなく、機関としての議会の権限であるため議決が必要です。議決に当たっては、法に照らして要件を慎重に検討する必要があります。また、検査や調査は、実際には特別委員会等を設置することもあり、検査等が終了した際には報告書を提出することになりますので、その内容について十分な吟味が必要となります。
 特に、法100条1項に基づく、いわゆる「100条委員会」は、議会の伝家の宝刀として行政監視の最たるものとされていますが、設置しても十分な成果が得られず、住民から批判を浴びる場合も少なくありません。設置に当たっては、調査手法や報告書の作成方法等について十分な準備が必要です。
 (ウ)意見書
 自治体議会では、法99条で意見書を国会又は関係行政庁に提出することができるとされています。関係行政庁には、首長も含まれており、首長部局では、議会から意見書の送付があると、意見書の内容により、措置要求と意見表明とに分けて対応を検討し、必要に応じて議会にも報告します。意見書議決後のフォローも重要です。意見書への対応状況について、必要に応じて議会で首長側の取組みを質(ただ)すことも考えられます。

イ 条例等の活用
 地方自治法の定める既存制度のほかに、条例により、自治体独自で議決事項を追加(法96条2項)したり、施策の進捗状況について議会への報告を求める規定を設け、監視機能を高めることができます。
 例えば法243条の3第2項による出資法人の経営状況報告について、地方自治法施行令152条1項、2項では出資割合が2分の1以上の法人等は報告が必須とされていますが、条例で定めることにより報告対象となる法人の出資割合を4分の1以上まで広げることが可能です(同条3項)。また、経営状況の議会報告のほかに、一定割合の出資を議決事項とするなど、条例により、既存制度に比べて議会のチェック対象を広げることも可能です(3)

ウ 決議の活用
 決議は、意見書等と異なり、法律上の根拠はありませんが、議会が機関としての意思を表明するものです。よく見られるものとしては、決算の承認に当たっての附帯決議(意見書を付す場合もあります)などがあります。決議には、法的拘束力はありませんが、住民に対して議会の考え方を伝えることにより、監視機能を発揮することができます。

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