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2017.10.10 医療・福祉

虐待のない地域づくりを目指して~議員提案による虐待禁止条例の制定~

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4 「埼玉県虐待禁止条例」の内容

(1)タイトルと基本コンセプト
 まず「虐待は絶対にあってはならない」という認識を県民に徹底するためには「防止」より「禁止」という言葉の方がふさわしいと考え、「虐待禁止条例」という題名を付けました。
 また、児童虐待、高齢者虐待及び障害者虐待の区分を問わず、虐待はいかなる理由があっても禁止されるものであるという強い意志を県・県民全体で共有するため、あえて法律では3本に分かれているものを一本化しました。
 そして、児童、高齢者及び障害者の権利利益を擁護するため、その根底をなす基本理念として次の4点を掲げました。
 ① 虐待は、児童等の人権を著しく侵害するものであって、いかなる理由があっても禁止されるものであることを深く認識し、その防止等に取り組むこと。
 ② 虐待の防止等については、社会全体の問題として、地域の多様な主体が相互に連携しながら取り組むこと。
 ③ 施策の実施に当たっては、児童等の生命を守ることを最優先とすること。
 ④ 養護者への支援を、切れ目なく行うこと。

(2)ポイント
 本条例のポイントは、次の7点です。
 ① 法律では3本に分かれているものを、虐待禁止条例として一本化したこと。
   「虐待」に関して、法律ではその類型や行為者が児童虐待、高齢者虐待及び障害者虐待でそれぞれ異なっていますが、その凹凸を全てならし、児童、高齢者及び障害者の3者共通の「養護者による虐待」として幅広く定めて一本化し、虐待禁止条例として横串をさして取り組むこととしました。
 ② 養護者が児童、高齢者及び障害者の安全の確保に配慮すべきこと(安全配慮義務)を明文化したこと。
   養護されるべき児童、高齢者及び障害者は、危険を予測・回避する判断力が低いため、家族などの養護者はこれらの者の生命、身体等について、危険から保護するよう配慮する必要があることから、その旨を明記しました。
 ③ 県が市町村と連携して通告等をしやすい環境を整備する旨を規定したこと。
   虐待の通告等の窓口が市町村の各担当や児童相談所などに分かれているため、誰もが分かりやすい通告等の連絡先を一元的に整備する必要があると考えました。
 ④ 虐待防止研修の義務付けをしたこと。
   保育園などの福祉施設の職員や学校の教職員等が虐待に関する専門的知識を習得することが虐待の予防や早期発見に資するものであると考え、施設職員等に対する虐待防止研修の義務付けを行いました。
   県が施設の管理者等に対して研修を行い、その研修を受講した者が施設内でフィードバック研修をし、全職員に行き渡るようなスキームを想定する条文としました。
 ⑤ 虐待情報の共有の促進、関係機関の連携強化を規定したこと。
   虐待による死亡事例は関係機関の間での連携不足に起因するものも多数見受けられることから、警察や児童相談所等との間で情報をしっかりと共有する必要があると考えたものです。
 ⑥ 乳児家庭全戸訪問事業等の促進による児童虐待予防の取組みの促進を規定したこと。
   虐待による死亡事例は乳児期がその多くを占めていることから、乳児家庭全戸訪問事業等の徹底により、子育ての孤立化を防ぐとともに、全ての乳児の状況を把握をするためのものです。
 ⑦ 県による虐待の検証を義務付けたこと。
   再発防止策を検討するためには、死亡事例のような児童、高齢者及び障害者の心身に著しい重大な被害を及ぼした虐待について検証することが重要であることから、県の検証を行うことを義務付けたものです。

(3) 施行期日
 施設職員等に対する研修の義務付けを行うことから、周知や準備をする期間を考慮し、施行日は平成30年4月1日としました。

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