埼玉県議会自由民主党議員団 埼玉県虐待禁止条例プロジェクトチーム
会 長 田村琢実
事務局長 立石泰広
平成29年7月に「埼玉県虐待禁止条例」が全会一致で可決・成立しました。児童、高齢者及び障害者に対する虐待全般を網羅的に一本化した条例の制定は、都道府県で初めてです。
虐待をなくすために、どう取り組んでいくべきか。埼玉県における議員提案による政策条例の検討経緯を含め、その概要について紹介します。
1 条例を検討するに至ったきっかけ~深刻な虐待事件~
埼玉県では、平成28年1月に、狭山市で3歳の女児が母親及び同棲していた男性に暴行を加えられた結果、死に至るという大変痛ましい事件が起きました。平成29年4月にも鶴ヶ島市で父親が1歳の男児を殴り、重体にさせた事件が起きています。
このように、埼玉県においても深刻な虐待が次々と発生している状況にありました。
狭山市や鶴ヶ島市での事件以外に関しても、児童、高齢者及び障害者に対する虐待は家庭や施設などの閉鎖的空間で行われているため、周囲が虐待に気づきにくく、深刻化していくケースが数多く見受けられるところです。
虐待を防止するため、「児童虐待の防止等に関する法律」、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」、そして「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のいわゆる虐待防止3法が制定・施行されていますが、いまだに県内の虐待件数はいずれも増加する傾向にありました。
2 プロジェクトチームによる条例案の検討
このような背景を踏まえ、埼玉県議会自由民主党議員団では、虐待をなくすためにどうすればよいかを検討する必要があると考え、平成28年5月に、団内にプロジェクトチーム(以下「PT」といいます)を設けました。
まず、実際に虐待に対応している児童相談所や市町村窓口の視察や、県の虐待担当課からのヒアリングなどを行い、行政の実情の把握に努めました。
次に、PT内に、児童虐待、高齢者虐待及び障害者虐待の3つの小委員会を設けて、同年8月から9月にかけて、それぞれの福祉に携わる25団体の方々との意見交換をさせていただきながら、課題の洗い出しとその対応策の検討を行いました。
関係団体との意見交換の中では、様々なご意見をいただきました。「施設内虐待について、施設内での研修の義務付けは効果的だと思う」、「よい介護をしようと悩んで疲弊してしまい、虐待につながる人も多く、養護者支援の視点が必要である」、「どのような行為が虐待に当たるのかについての親の認識が低いことが問題であり、分かりやすいガイドラインの作成やチラシなどの充実により徹底する必要がある」など、ほかにも非常に多くの示唆に富んだご意見をいただいたところです。
これらのご意見を踏まえて小委員会ごとに考えをまとめて報告を行い、同年10月から再度、PT全体で論点を整理しながら、条例の骨子案についての検討を進めていきました。
PT立ち上げから約1年間。ついに骨子案が完成しました。
条例の骨子案が完成したため、平成29年4月から5月にかけてホームページにおいてパブリックコメントを行いました。
パブリックコメントの期間内に様々な貴重なご意見をいただきましたので、ご意見を反映して、再度PTで練り直して完成させたのが今回の条例案です。
PTで作成した条例案について会派内での報告・了承を経た後、平成29年6月定例会へと上程する運びとなりました。