【事例4】大阪府泉大津市議会
特徴:2015年度分からネットで公開。議会事務局と正副議長がチェックし、月ごとに公開している。多くの議会では先払いされているが、泉大津市議会では「後払い」方式をとっている。
・泉大津市議会ホームページ 政務活動費の公表 http://izumiotsu.gsl-service.net/doc/2015072500011/
【事例5】北海道栗山町議会
特徴:2014年に政務活動費を引き上げるとともに、4半期ごとの「後払い方式」を採用。税理士と契約して第三者による監査を導入、報告書とともに領収書をネットで公開した。
・栗山町議会ホームページ 政務調査報告
http://town.kuriyama.hokkaido.jp/gikai/disclosure/s_cost/index27.html
【事例6】北海道鹿追町
特徴:2011年度から政務活動費を導入した。政務活動費の申請書を支給前に議長を経由し町長に提出する「申請方式」を採用しており、調査報告書とともに領収書をネットで公開。公募の町民5人が第三者審議員を務め、議員は委員の前で使途と成果を報告する。
・鹿追町議会ホームページ 政務活動費 https://www.town.shikaoi.lg.jp/gikai/seimukatsudo/
・鹿追町議会 議会白書
https://www.town.shikaoi.lg.jp/gikai/gikaihakusho/
以上、6議会の事例を紹介した。ただ単にPDFファイルで領収書を公開するだけでは、住民の利便性を考慮していない。大阪府議会や嬉野市議会は、公開にひと手間かけることで市民が閲覧する際の手間を大きく軽減させている。多くの議会では、議長や議会事務局によるチェックがなされているが、大阪市会では弁護士と公認会計士を、栗山町では税理士、そして鹿追町では公募の町民によるチェックを受けている。また、支払方式は議論の余地はあるが、先払方式に限らず、民間企業の考え方に近い後払いや申請方式を導入した事例もある。
3つの提言
これらの先進事例から見えるのは、住民への説明責任を果たし、政務活動費を使って地域の課題を調査・解決しようとする議会の姿である。調査結果を踏まえて、当所は以下の3つを提言する。
(1)政務活動費は適切な額が必要
地方自治法100条14項に「議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる」とある。
議会の最大の権限である「議決権」を行使するためには、十分な争点情報や見識を踏まえ、“議”が尽くされることが重要である。政務活動費は、調査研究等のために必要であり、各議会が適切な額を議論して決定すべきだ。
(2)領収書はすべてネットで公開
一般企業は1円でも支出した場合、領収書がなければ支払われないケースもある。税金から捻出されている政務活動費は、なおさら説明責任が問われるため、住民から見て「適切な支出がされている」ことが「いつでも・どこでも・誰でも」分かるよう、領収書はすべてネットで公開するべきである。
(3)議会事務局、第三者によるチェックの強化
政務活動費の不正受給は、議員個人だけでなく、議会全体の不信につながる。議会事務局職員によるチェック体制の強化のほか、第三者によるチェックの仕組みを導入することも検討するべきといえる(将来的には会計士等による外部監査も考えられる)。
本調査の結果は、2015年度の活動状況であり、当所への各議会からの問合せ状況も鑑みると、2016年度の状況はより積極的な情報公開に向きつつあることは感じている。調査結果の公表は2017年6月を予定しており、結果が待たれる。
地方創生時代において、地域の価値を高めていくためには地方議会の役割が大きい。議員報酬や政務活動費の「削減」を自ら申し出る議会は、「自分たちの役割は小さい」と宣言しているようなものだ。地域の民意を反映し、執行部が本来できない「改革」を議会が率先して提案するためにも、積極的に調査研究に取り組むことが必要であり、それを支援するための政務活動費の支給である。多くの地方議会で領収書のネット公開が進み、住民への説明責任を果たし、よりよい地域にするための政務活動が拡大することを期待している。
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〔参考資料:政務活動費領収書のネット公開を実施している議会リンク一覧(2015年度)〕
各議会におけるネット公開の詳細については、下記リンクよりご覧ください。
・都道府県
大阪府議会/高知県議会
・政令市
大阪市会/神戸市会
・東京23区
世田谷区議会
・市
函館市議会/釧路市議会/千歳市議会/登別市議会/弘前市議会/白石市議会/須賀川市議会/常陸太田市議会/富士見市議会/ふじみ野市議会/立川市議会/三鷹市議会/小平市議会/秦野市議会/大和市議会/南足柄市議会/小浜市議会/刈谷市議会/蒲郡市議会/犬山市議会/尾張旭市議会/豊明市議会/鳥羽市議会/大津市議会/長岡京市議会/京丹後市議会/泉大津市議会/西宮市議会/加西市議会/天理市議会/浜田市議会/益田市議会/江津市議会/宗像市議会/古賀市議会/嬉野市議会/八代市議会/水俣市議会
・町
福島町議会/栗山町議会/三芳町議会/嵐山町議会/小川町議会/杉戸町議会/箱根町議会
・参考:未回答の議会
鹿追町議会/川西町議会
(※議会改革度調査2015で、領収書を「ネット上で公開」と回答した議会を掲載。鹿追町議会と川西町議会は調査未回答であるが、参考として掲載した)