地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2016.05.25 政策研究

第1回 新宿区客引き防止条例の改正~条例の実効性確保とその法的検討~

LINEで送る

(3)指導、警告、勧告、公表及び過料(改正後条例10条〜12条、14条及び19条)
 改正後の条例は、客引き行為等又は客引き行為等を利用した営業をしていると認められる者への行政の対応として、指導、警告、勧告、公表及び過料を規定している(後のものほど重い処分である)。
 まず、区長は、特定地区において、客引き行為等又は客引き行為等を利用した営業をしていると認められる者に対し、当該行為を中止するよう指導するものとされ(改正後条例10条1項)、当該指導を受けた者が、さらに当該違反行為をしていると認めるときは、その者に対し、当該違反行為をしてはならない旨の警告をすることができるとされる(改正後条例11条)。
 また、区長は、警告を受けた者が、さらに当該違反行為をしていると認めるときは、その者に対し、当該違反行為の中止を求める旨の勧告をすることができるとされる(改正後条例12条)。
 さらに、区長は、勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わなかったときは、告知聴聞の機会を与えた上で、当該勧告の内容等を公表することができるとされる(改正後条例14条1項及び2項)。「新宿区公共の場所における行為等の防止に関する条例施行規則」によれば、公表事項は、①公表を開始する日及び公表をする期間、②勧告を受けたものの氏名及び住所(法人にあっては、その名称、所在地及び代表者の氏名)、③違反行為に関連する営業所名及び営業所の所在地、④違反行為の内容及び正当な理由なく勧告に従わなかった旨、⑤その他区長が特に必要と認める事項、である(同規則7条1号〜5号)。
 また、勧告を受けた後に、特定地区において客引き行為等又は客引き行為等を利用した営業をした者は、5万円以下の過料に科することとされている(改正後条例19条1号)。過料については、違反行為を行った者だけでなく、その使用者に対しても科すことができる両罰規定も設けられている(改正後条例20条)。

(4)立入調査等(改正後条例13条)
 上記(3)の処分の実効性を担保するためには、処分の前提となる事実認定を可能にするための調査権限が必要になる。
 そこで、区長は、指導、警告又は勧告を行うために必要があると認めるときは、区の職員をして、違反行為を行った者の事務所、営業所その他の場所に立ち入らせ、必要な調査をさせ、又は関係人に対し質問をさせ若しくは文書の提示その他の協力を求めさせることができるとされる(改正後条例13条1項)。
 ここで、立入調査又は質問をする職員は、身分証明書を携帯し関係者に提示しなければならず(同条2項)、また立入調査又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないとされる(同条3項)。これは立入調査及び質問の権限が行政によって濫用されることを防止する目的の規定である。
 なお、調査権の実効性を担保するため、立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の陳述をした者は、5万円以下の過料に科することとされている(改正後条例19条2号)。この過料についても両罰規定が設けられている(改正後条例20条)。

(5)店舗場所提供者との協力(改正後条例15条〜17条)
 客引き行為等を根絶するためには、上述のような処分及びそれを裏付ける調査権限も重要であるが、客引き行為等を利用して客を誘引する事業者の活動を困難にすることも有効である。このような観点から、改正条例では、「区内に所在する土地又は建物を他人に提供する者」(通常は店舗不動産の賃貸人や転借人が該当する。以下「店舗場所提供者」という)に関し、以下の規定を設けている。
 まず、改正後条例16条は、店舗場所提供者に対し、①当該提供に係る契約(その更新の契約を含む。通常は賃貸借契約や更新契約を指す。以下「賃貸借契約等」という)を締結するに際し、その相手方が当該建物を飲食店等の用に供する場合は、客引き行為等又は客引き行為等を利用した営業をしない旨を約させ(同条1号)、また、②賃貸借契約等において、当該契約に係る建物が飲食店等の用に供され、違反行為が行われた場合に当該契約を解除することができる旨を定める(同条2号)、といった措置を講じるよう求めている。
 そして、区長は、違反行為を繰り返した者につき公表を行ったときは、その者に対する店舗場所提供者に対し、当該公表された違反行為に係る事実を通知することができる(改正後条例15条)。
 さらに、店舗場所提供者は、改正後条例15条の通知を区長から受けたときは、賃貸借契約等契約の解除及び当該建物の明渡しの申入れをするものとされる(改正後条例17条)。
 これらの規定により、悪質な違反行為者による飲食店等の営業を、その店舗建物から排除することが可能になる。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る