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2016.05.25 政策研究

第1回 新宿区客引き防止条例の改正~条例の実効性確保とその法的検討~

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3 改正の背景

 新宿区の客引き防止条例は、平成25年6月に成立した。そこでは、「区民生活の平穏を保持し、安全で安心な地域社会の実現に資すること」を目的として、「客引き行為等」を禁止してきた(改正前条例6条)。
 そして「客引き行為等」とは、①酒類を伴う飲食をさせる行為の提供、個室において専用装置による伴奏音楽に合わせて歌唱を行わせる施設(カラオケ)の提供及び店舗型性風俗特殊営業に関する客引き、といったサービスの提供を受ける客を誘引する行為(改正前条例2条1号ア〜ウ)のほか、②「人の性的好奇心に応じて人に接する役務」や「専ら異性に対する接待をして酒類を伴う飲食をさせる役務」に従事するよう勧誘する行為及び「わいせつな行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ、又は刺激するものをビデオカメラその他の機器を用いて撮影するための被写体」となるよう勧誘する行為、といった風俗業のスカウト行為も含む概念として定義されてきた(改正前条例2条1号エ及びオ)。
 しかし、条例中、客引き行為等の禁止に違反した場合の罰則の規定が存在せず、特に、歌舞伎町の一部飲食店等において、上記①の態様の行為によって誘引された客に対して法外な対価を要求する「ぼったくり」事件が頻発し社会問題化する中、禁止規定の実効性に問題があると指摘されてきた。また、新宿区においても、公共の安全確保、街のイメージ向上及び街の活性化を図るため、客引き行為等を撲滅することが重要であると認識するようになった。
 このような中、平成27年7月には、新宿駅周辺の商店街により構成される「新宿駅周辺の安全・安心を実現する会」から、客引き行為に関する罰則を盛り込んだ条例改正の要望書が区長宛てに提出された。
 そこで、新宿区では、区・警察・地域が一体となったパトロールや不動産業者等の各関係団体との連携強化、客引き行為等を利用する飲食店等への対策及び罰則等を盛り込んだ条例改正の検討を開始した。

4 改正作業の状況

 改正作業は、区長室危機管理課(当時)の安全・安心対策担当副参事及び総務部総務課の文書法制係を中心に行われた。新宿区の安全・安心対策担当副参事は、警視庁職員が有する専門的識見や経験を区政に生かすために警視庁に派遣要請して受け入れている。これにより、東京都はもとより警視庁管内の他区市町村の条例を横断的に参考にすることができるほか、警察や検察などの取締機関の知見を生かすことが可能になった。
 改正条例案は、平成27年12月15日に公開され、翌年1月15日までパブリックコメントに付され、そこで得られた意見に従い一定の修正を加えた上で、平成28年区議会第1回定例会に提出された。新宿区議会は、これを防災等安全対策特別委員会に付議し、同委員会の審議を経て、3月22日の本会議において全会一致で可決した。
 なお、改正条例は、平成28年4月1日から施行されているが、後述する指導、警告、勧告、公表及び過料並びに立入調査等に関する規定は、周知期間をおいて同年6月1日から施行される。

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