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2016.03.25 公職選挙法

公職選挙法改正(いわゆる「選挙人名簿法」)の解説

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Ⅳ 地方自治体の事務への影響

 本法の施行により、従来の扱いでは選挙人名簿に登録されず、国政選挙において投票ができなかった者についても、転出前の旧住所地において投票をすることができることとなる。この場合の投票の方法は、旧住所地の投票所に出向いて直接投票を行うか、不在者投票の手続によることとなる。
 旧住所地と転出後の新住所地が近接していたり、選挙の期日に旧住所地に赴く予定があったりする場合は、旧住所地の投票所で投票を行うことも考えられるが、そうでなければ、不在者投票の手続によることが現実的である。
 しかし、最近の国政選挙においては、期日前投票の利用者数が全投票者数の20%程度に上っているのに対して、不在者投票の利用者数は全投票者数の1%程度となっており、有権者にとっては期日前投票と比べてあまりなじみのないものではないかとも考えられる(表1及び表2参照)。
 また、選挙人名簿登録地以外の市町村における不在者投票は、投票所を訪れれば投票を行うことができる投票日当日の投票や期日前投票と異なり、事前に投票用紙等を請求するなどの手続が必要となる。
 こうした点から、不在者投票の手続により投票ができることやその手続についての周知・説明が十分に行われなければ、本法によって投票をすることができることとなる有権者が、投票の機会を逸することにもなりかねない。
 国会の審議においても、複数の議員から投票方法等についての周知に関する質疑があった。総務省からは、本法により新たに選挙人名簿に登録されることとなる有権者に対しても、従来の制度で転出後の4箇月間は転出前の住所地の選挙人名簿に登録されていた有権者に対するのと同様の扱いで周知するものと考えている、との答弁があった。
 周知について、都道府県及び市町村の選挙管理委員会との関係では、各選挙管理委員会は、「特に選挙に際しては投票の方法、選挙違反その他選挙に関し必要と認める事項を選挙人に周知させなければならない」と定められており(公選法6条1項)、また「市町村の選挙管理委員会は、特別の事情がない限り、選挙の期日の公示又は告示の日以後できるだけ速やかに選挙人に投票所入場券を交付するように努めなければならない」と定められている(同法施行令31条1項)。
 総務省が全国の市区町村の選挙管理委員会を対象に行った調査では、前回の衆議院議員総選挙において、新住所地に投票所入場券を送付したり、旧住所地で投票ができる旨を転出時に説明したりするなどの対応を行っている選挙管理委員会が全体の95%以上とのことである。現在でも、ほぼ全ての各選挙管理委員会において説明がなされているとのことであるが、本法の成立背景や趣旨とともに、選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられること等をも踏まえ、各選挙管理委員会においては、引き続き丁寧な周知・説明に努めていただくことが重要となるのではないか。
 ※文中、意見にわたる記述は、筆者の個人的な見解である。

表1 期日前投票者数・利用率表1 期日前投票者数・利用率

表2 不在者投票者数・利用率表2 不在者投票者数・利用率


■参考資料
◇安田充=荒川敦編著『逐条解説 公職選挙法(上)』(ぎょうせい、平成21年)
◇第190回国会衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会議録第2号
◇第190回国会参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会会議録第2号
◇総務省自治行政局選挙部『平成24年12月16日執行 衆議院議員総選挙 最高裁判所裁判官国民審査 結果調』
◇同『平成25年7月21日執行 参議院議員通常選挙 結果調』
◇平成27年6月7日付けNHKニュース
◇衆議院法制局ウェブページ http://www.shugiin.go.jp/housei/

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