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シリーズ18歳選挙

2016.02.25 若者参画

大阪模擬選挙2015が目指したもの ~副教材公開後、大阪を題材に全国で模擬選挙を実践した意義~

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2016年の本格実施に向けて

 今回の企画は、「大阪府知事選・市長選の模擬選挙」という面と、「他自治体の選挙を題材にした模擬選挙」という提案の面がある。今回の実施を受け、「18歳選挙権元年」に向けて以下の3点に注目したい。

(1)地方選挙での模擬選挙実施
 模擬選挙は一般的に、国政選挙をテーマに実施されることが多い。それは、報道を中心に情報が集まりやすいことと、地方選挙では候補者の関係者が生徒の身内にいる可能性があるなど、「生々しい」ことを避ける傾向があることも理由のひとつである。だが、本来的には、生徒たちの生活により身近な地方選挙での実施をすべきではないか。仮に「生々しさ」を避けて国政選挙しか模擬選挙の実施ができないとしたら、それは大人の立場に立った配慮に基づいており、地域のことを知り、候補者の政策を比較して投票するという未来の有権者の立ち位置に立ったものではない。18歳選挙権時代における主権者教育は、地域のことを知り、政治や社会に参画する意識を醸成することをひとつの目的としている。そのためには積極的に地方選挙での模擬選挙を検討すべきだ。

(2)時期を選ばない「実際の選挙期間中」の模擬選挙の実施
 模擬選挙を実施しようとすると、実際の選挙期間中に所在の自治体での選挙を対象とするパターンと、架空のシミュレーション選挙をするパターンが考えられる。シミュレーション選挙の利点も多くあるが、社会とのつながりをより強く感じることができる「実際の選挙期間中に実施する模擬選挙」は生徒に多くの気づきをもたらす。ただ、所在地の選挙を対象とすると数年に一度しか実施のチャンスがなく、若しくは、すでに結果の分かった前回選挙を対象とすることになる。その点、他自治体の選挙を題材にした模擬選挙であれば、生徒たちが「投票を体験する」、「政策を比較する」という点において、多くの実施のチャンスがある。より生徒たちが身近に感じられる地域の選挙や、今回の「大阪ダブル選挙」のような関心が寄せやすい選挙を対象とするのが望ましいが、他自治体の選挙を題材にすることで、実施時期をある程度自由にできる。また、今回の模擬選挙実施の中で教員の問合せを受けたある県選挙管理委員会は、選挙管理委員会のウェブサイトに掲載された選挙公報のPDFを印刷し配布することについて、「全員が選挙区外であれば図画の頒布・掲示の制限はかからない。全員に配布しても問題ない」という判断をした。実際の選挙期間中でも、他自治体の選挙を題材にすることで公職選挙法の制限を超えた「比較的自由な」授業をすることができる

(3)18歳選挙権時代の公職選挙法や教育のあり方、選挙管理委員会と教育委員会の連携
 (2)でも少し触れたように、今回の模擬選挙実施を受けて「これまでの教育と政治の分断が悪い影響を与えてしまい、生徒の立ち位置に立った政治教育の実施を邪魔している」という感想を個人的には持った。具体的にいうと、公平・公正な資料として選挙公報があるが、「選挙管理委員会がウェブサイトにアップしたPDFを印刷して授業で配布すると公職選挙法の規制の対象になるおそれがある」などの「公職選挙法の壁」ともいうべきものがある。さらに政治的中立性・公平性の過剰な配慮などがあり、これらが教育の現場が実現したい主権者教育の実施を妨げている。また、主権者教育は教育委員会、啓発は選挙管理委員会という“縄張り意識”も未来の有権者の意識醸成には不要な壁である。今回の企画は、「Yahoo!みんなの政治」や日本青年会議所、ネットメディア、NPOや学生団体、高校生団体などとの連携で実現できた。次の社会を担う未来の有権者を育てるのは、社会を今担っている私たちであり、彼らの立ち位置に立った教育や選挙のあり方が求められている。

 最後に、“18歳選挙権”というが、高校生の政治教育でも遅すぎるくらいだ。今問題となっている政治不信や政治離れは、若年層が持つ政治への距離感や無力感が根本にある。今後は2016年3月の熊本県知事選など、地方選挙や国政選挙での模擬選挙実施も検討している。より多くの政治・社会との触れ合いの中で、未来の有権者が政治へ参加する意識をこれからも醸成していきたい

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