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2015.10.13 政務活動費

正しく使おう!政務活動費

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誰が政務活動費の支出の適正を確保できるか

 上記に見るように、X議会では政務活動費はこれまで必ずしも有効に使われてきたとはいえない。それどころか、無駄遣いや無理な使い切りなどが行われてきたことがうかがわれるのである。これまで各会派内、議会内で一定の歯止めをかけてきた努力は評価するが、到底、十分だったとはいえない。それでは、政務活動費の支出を適正にさせるためには、誰がどう対応すればいいだろうか。

●会派
 政務活動費は会派に交付される。会計責任者を会派に置く。会計責任者が他の議員らに厳しい意見を言えるだけの力があれば、かなり効果的であろう。しかし、政務活動費の使途は会派全員で議論して決めているわけではない。一部を会派、他を個々の議員が自分の判断で使途を決めている。そのため、各議員の使い方はばらばらで、問題のある使い方があっても、それが毎年繰り返されていることからすると、会派内で当該議員に改善を求めるようなことはほとんど行われていない。
 一人会派では会派内におけるけん制はない。

●議長
 条例では適正確保のための権限が議長に与えられており、「議長は、この条例に定める政務活動費が適正に執行され、議員の政務活動の実態に即したものとなるよう、常に本制度の改善に努めるとともに、第◯条の規定により提出された中間収支報告書及び収支報告書について必要に応じて調査を行う等、政務活動費の適正な運用及び使途の透明性の確保に努めなければならない」と規定している。しかし、実際には全く機能していない。そもそも議長は多数派の会派内で人選されているから、会派の意向に従わざるを得ない。また、議長は他の議員らに議事運営を協力してもらう立場にあるから、議長が政務活動費の個々の支出について調査をするだけでも、調査対象となった会派・議員は議長に非協力的になる可能性が高くなる。

●議会事務局
 議会事務局の職員は、自治体の職員として一定の経験がある者であるから、政務活動費の支出の適否を判断する法的知識はある程度あるはずである。議会事務局が自由に発言できる環境が議会にあれば、議会事務局が適正を確保する役割を果たせるであろう。
 しかし、実際には議会事務局はそのような役割をあまり果たしていない。議員に厳しい指摘をするようなことがあれば、一部あるいは全議員から一職員が批判にさらされ、議会事務局の機能が損なわれるおそれさえある。議会事務局の職員はもともと執行部の職員として採用され、その人事のローテーションとして議会事務局に配置されているから、執行部に戻ったときに当該職員が担当する業務に関して議員らから足を引っ張られる可能性がある。

●首長
 首長は、議員の政務活動費についても予算執行権がある(地方自治法149条2号)。したがって、違法な支出については返金を求めることができる。
 しかし、そもそも政務活動費は、地方自治法に規定される以前から法的根拠なしに議員に交付されていた「第二の報酬」的意味合いのものだったのであり、その使途について首長が口を差し挟むことはなかった。そのようなことをすれば、議員、議会への攻撃として議会全体が首長の執行権の行使を徹底的に妨害するおそれがあるからである。政務活動費の支出くらいで行政運営に支障を生じさせてはいけないというのが、首長の実感であろう。

●監査委員
 監査委員の人数が4人の都道府県等では2人又は1人、2人の市町村では1人が議員の指定席になっている(地方自治法196条1項)。委員は報酬を伴うこともあって多数派の議員から選ばれるのが通常であるから、政務活動費の支出について厳しい指摘をすることは期待できない。議員選出委員自身の支出が問題にされている場合は除斥されるが、それ以外の案件で委員として活動している議員について監査委員が厳しい指摘をするはずがない。

●第三者による審査会
 第三者による審査会を設置する傾向はどこの議会にもある。X議会では、全国の議会に先駆けて、X議会政務活動費交付額等審査会を設け、政務活動費の支出のあり方について外部の第三者が意見を述べることができるようにした。このような制度は、全議員が積極的に評価するならば、審査会の意見が尊重されることで有効に機能する。現に審査会の意見が尊重されていた時期は、大いに改善された。しかし、逆に、全議員の評価がばらばらであったり、消極的評価であれば、審査会の意見は軽視され、ほとんど意味がない。今年4月から審査会委員は選任されないまま現在に至っている(平成27年9月現在)。

●住民
 住民は、自治体の組織外にいる点で、会派・議員からの独立性が強い。違法な支出は違法と指摘しやすい立場にいる。
 政務活動費の支出が適正でない場合には、住民としては、政務活動費の支出に関する情報公開請求(情報公開条例)、住民監査請求(地方自治法242条)、住民訴訟(同法242条の2)を通じて個別具体的に問題点を指摘していくしかない。裁判によることによって、法的に明白な結論が出され、以後の同様の支出をけん制する機能を確実に果たす。民主主義はお任せでは進歩しない。住民が法律や条例上の権利を積極的に行使することこそが最も実効的であり、効果的である。
 住民監査請求・住民訴訟が会派間の抗争の代理戦争的な様相を呈する場合もあるが、会派・議員が適法な支出に限っているならば、これらの標的になることはないし、あっても、ほとんど負担にならないであろう。

おわりに

 政務活動費の支出について問題が多い議会にあっては、いったん政務活動費に関する条例を廃止したり、大幅な減額を行い、議会全体で政務活動費の支出のあり方を見直してはどうか。そのような対応をすること自体が、議会に対する住民の信頼回復のきっかけになるに違いない。

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