弁護士 清水勉
昨年7月、兵庫県議会議員が政務活動費を不正利用していたことが大々的に報道され、その内容のでたらめぶりに、あきれなかった人はいなかったのではないだろうか。その後、県議会が議員を虚偽公文書作成罪・同行使罪で兵庫県警に刑事告発したことにより刑事事件に発展し、神戸地検は今年8月、詐欺罪を加えて在宅起訴した。起訴にまで至るケースはまれだが、不正利用は決してこの議員1人だけではない。多くの人々がそう思っただろう。議会も執行部も同議員の政務活動費の使途がでたらめであることを以前から気づいていたはずだ。監査委員も見逃してきた。無責任のなれ合いの構図がここにある。
この一連の報道をきっかけに、他の地方議会についてもマスコミが政務活動費の支出に関心を持って取材、報道するようになり、不可解な支出が全国各地で次々に露見した。
その後、4月の統一地方選挙の季節を過ぎると、政務活動費報道は瞬く間に消えた。もちろん問題が解決したからではない。新聞、テレビのニュース価値として旬でなくなったからにすぎない。
以下では、私が政務活動費の使途をチェックし意見を述べる第三者委員会の委員を務めていた、ある自治体議会(仮に「X議会」としよう)について具体的に取り上げる。X議会は第三者委員会の意見を相当程度受け入れ、改善されてきた。マスコミ報道で取り上げられた全国各地のひどい内容に比べれば、その運用実態ははるかにマシである。それでも、後述するように多くの問題を抱えている。
本稿では、政務活動費条例がある議会であればどこででも起こり得る普遍的な問題点を指摘することにした。具体的には、駆け込み支出、領収証、使途(会議費、視察・研修費、通信費、印刷費、図書・資料費)を取り上げることにした。
参考とした資料は、X議会のホームページの中の「政務活動費の支出状況」コーナーと平成25年度の政務活動費の支出状況に関する収支報告書、領収証等である。
前提(政務活動費の交付額)
X議会では、平成13年に「X議会政務調査研究費の交付に関する条例」を制定して以来、今日に至るまで、政務活動費の交付額は1議員当たり月額15万円として、会派に対して四半期ごとに交付されている。そのため、会派を構成する議員数が変わると、これに応じて交付額が変わる。