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シリーズ18歳選挙

2015.08.10 若者参画

地方議会の挑戦~18歳選挙権拡大を機に、さらなる議会改革を~

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日本自治創造学会会長・明治大学名誉教授 中邨章

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 7回目となる日本自治創造学会の研究大会が、2015年5月28日(木)・29日(金)の2日間にわたり明治大学にて開催されました。今年の研究大会テーマは「人口減少と高齢化への挑戦~自治体・地方議会の知恵~」。当日は全国各地から自治体議員が多数参加しました。
 初日に行われた中邨章会長による講演について、6月19日に公布の改正公職選挙法(18歳選挙権)の内容を踏まえて加筆していただき、掲載します。(『議員NAVI』編集部)

“新”有権者登場で、投票率はどう変わるか

 いよいよ選挙権が18歳まで拡大されることになりました。来年(2016年)7月の参議院選挙から、18歳、19歳の有権者が登場してきます。今朝の『朝日新聞』(1)には、「若い人々の投票率が上がるのではないか」と法案提出を行った自民党船田元氏による観測が書かれていました。AKB48総選挙の盛り上がりなどを念頭にして、若い有権者は投票に行くだろうと思っているのかもしれません。私は非常に悲観的な考えを持っています。選挙権が拡大しても、投票率はほとんど変わらないのではないかと推測します。
 まず18歳という年齢要件についてですが、2014年にOECD(「経済協力開発機構」、以下「OECD」といいます)が、各国の投票の年齢要件を調べています。191か国の調査をした結果、176か国が18歳を選挙権年齢としているということでした。日本の20歳というのは、例外中の例外だということです。今回の公職選挙法の改正を受けて、日本はようやく世界の大半の国々と肩を並べることになります。
 選挙権年齢が18歳以上になって有権者の数がどの程度増えるのかというと、だいたい240万人前後だといわれています。これは有権者総数の約2%です。ですから、18歳、19歳が新しく有権者になっても、全有権者の数からすると2%増にとどまるのです。数としては、それほど大きいものにならないことになります。
 先日、大阪市で大阪都構想をめぐる住民投票(2)が行われましたが、そのとき最も重要な役割を果たしたのは、高齢者でした。60代、70代の有権者の票が、大阪市の住民投票の結果に非常に重要な役割を果たしたといわれています。今後の地方選挙でもその流れは変わらず、若い人々よりも高齢者の票の行方によって、選挙のあり方や選挙の結末が変わるのではないかなと思っています。
 もうひとつ重要なことは、2014年の衆議院選挙では、全世代の平均投票率が52.7%、60代の投票率は68.4%、20代は32.6%だったということです。つまり60代と20代を比べると、投票参加の率が倍近く差があるということです。ここから見ても、新しい有権者が選挙結果に対してどれくらいインパクトがあるか、疑問が残ります。今までの選挙とほとんど変わらないのではというのが、私の感想です。
 OECDは新しく有権者になった人々が、初めて経験する選挙でどの程度、選挙に参加するかを調査しています。これによると、アイスランド、韓国、ベルギー、デンマーク、オーストラリア、スウェーデンが投票率80%を超えています。一方、新しい有権者であるにもかかわらず投票率が50%を切った国もあります。フランス、ハンガリー、スイスなどです。

図1 国政選挙における新有権者の投票率の各国値(OECD調べ 2009年)図1 国政選挙における新有権者の投票率の各国値(OECD調べ 2009年)

 上記のうち、ベルギーとオーストラリアで投票率が80%を超えるのは当然のことです。選挙に行かないと罰金が科せられる義務投票制をとっているからです。義務投票制の国では、投票率は当然高くなります。日本として参考になるのは、韓国です。韓国も選挙年齢を18歳に下げています。その最初の選挙で新有権者の投票率は90%近くになりました。しかし、それ以降はというと、韓国も日本と同じで、若い人々の投票率は低い状態が続いています。来夏、日本でも2016年7月の参議院選挙で、18歳、19歳の皆さんが新しく有権者になり、240万人の有権者のうち、多くの人々が投票所に行くだろうと思います。それも一過性の現象です。回を重ねるごとに、地方選挙でどんどん投票率は下がってくると考えられます。

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