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2015.07.10 一般質問

質問力を議会力に〜一般質問を議会の政策資源とするために〜

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5 質問力を議会力に

(1)議会力を支える質問力
 議会改革にとって一般質問のシクミとトリクミは核心ではない。だが、一般質問の質が向上することは、議会の一員による監査機能・政策提案機能の発現を高めることであり、議会力を増すことでもある。
 議会力を支えるものは、議員一人ひとりの能力であり、それは情報収集能力、争点化する力、説明説得する力、議論する力などである。そして、議員かつ政治家としての自らの政治目的や政策目標に直接関わる一般質問は、それらの力を伸ばしうる最も重要な機会である。自主練やボランティアのような「ひとりでする」ものにとどめず、よい一般質問が増え、価値ある問題提起が受け止められる環境や制度を整えていくこと、よい一般質問の蓄積によって一般質問そのものの認識を変えていくことが期待される。

(2)政策資源としての一般質問
 本稿では、議員ひとりのものであるがゆえに限界がある一般質問を、議員活動の成果である議会の政策資源と位置付け、それを活用するための方策を検討した。「ひとりでもできる市政改革」が、「ひとりから始め、議会で進める市政改革」になる期待を描いてみたともいえる。
 現状の一般質問についての所感や認識から見ると、政策資源としての活用という水準ではないと感じられることはあるだろう。だが、事業や市政の問題点について丁寧に調べ、鋭く提起する一般質問を重ねる議員は確かにいる。そうした一般質問が議員ひとりのものではなく、議会の政策資源として生かされることは、何よりそのまちの市民にとって益となろう。そうであれば、進められるべきではないか。

(3)乗り越えるべきもの
 だが、特に4(3)で示した提案が容易には受け入れづらいだろうことも想像できる。特に、特定の議員が目立つことは他の議員にとって脅威であることによる、心理的抵抗感である。また、一般質問を政策資源として活用するシクミがあったとしても、議員同士の人間関係によっては、質の高い一般質問であってもやはり生かされないことはあり得る。現状でも、優れた一般質問が、問題意識が高く妥協しない、そのために一匹オオカミになりがちな議員によってなされてはいないか。その知見が生かされない状況は、議会、そして何より市民の不利益であり、乗り越えられるべきものではないか。
 一般質問を議会の政策資源として活用することは、それら属人的な要素を超えて、一般質問そのものの政策としての意義や価値を評価すること、そうすべき規範が認められていくことにつながる。それは容易ではないかもしれないが、「よい一般質問」の積み重ねと、政策主体としての議会にとってそれが重要な資源であるという認知によって支えられよう。一般質問に熱心に取り組む議員の奮起と、政策主体となろうとする議会の模索とがつながることを期待したい。


(1) 質疑では、標準市議会会議規則によると、意見の表明はできない(55条3項)。
(2) 市に限らず、都道府県町村政も含むが、本稿では以下略して市政とする。筆者の一般質問についての認識は中核市以下の規模の自治体を中心に形成されているが、論としてはそれより規模の大きい自治体にも当てはまることを想定している。
(3) 土山希美枝「質問力を上げよう 第1回〜第3回」『議員NAVI』41〜43号(2013〜2014年)を参照。
(4) 2007年9月18日第18回地方分権推進委員会での片山善博氏の発言。
(5) 行政の不正行為を暴露するなど、共感の有無にかかわりなく、強制的に是正されるべき点を質問するものも当然ある。
(6) 自治体議会改革フォーラム「全国自治体議会の運営に関する実態調査2014」『議会改革白書2014年版』。
(7) 松下圭一『政策型思考と政治』東京大学出版会、1991年、20頁。

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