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2015.07.10 一般質問

質問力を議会力に〜一般質問を議会の政策資源とするために〜

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3 「よき一般質問」は市政を変えるか

(1)議員活動の労力と知見の集約
 一般質問を個別に見ると、必ずしも残念な質問やもったいない質問ばかりではない。市民相談から個別要求を超えてまちの課題を発見したり、資料を探り問題点を整理したり、不適切な行政手続や事務執行を捉えたり、なるほどと思わせるものも確かにある。毎定例会で一般質問を行う議員も少なくない。そうした議員にとって、一般質問は「まちをよくする」ことを目指す議員活動の労力と知見の集約であると感じられる。
 だが、残念ながら、そうした議員活動の集約として質の高い一般質問が行われても、それが行政に受け入れられなければ、何かを変えることに直結しないのである。
 素直に考えれば、よい一般質問がなされれば、その問題提起が受け入れられ、行政運営や事務執行の何らかの改善がなされることが想像される。そうなる場合もある。だが、行政機構との関係いかんで、あるいは行政機構の「指摘を受け入れ対応する」姿勢の硬軟で、またあるいは首長の「もの分かり」次第で、よい一般質問であってもその扱いは大きく異なり、ときには容易に素通りさせられてしまう。ならば、政治家として議員として問題提起や政策提案があっても、一般質問に労力を集中させるのは無駄になってしまわないか? 議場の外で行政に交渉する方がまだ労力の無駄を防げるのではないか?
 だが、一般質問の質の向上が目指されず、インフォーマルな過程で政治家としての政策目標の実現を目指すことが常態になれば、そのまちの市民にとって3つの意味で不幸である。ひとつは、残念な質問やもったいない質問があふれ続け、議員の能力への不信を高め続けていくということ。2つ目は、市民に見えないところで政策や行政運営が決まったり変わったりし、政治への不透明感が増すということである。3つ目、質の高い一般質問を行ってもそれが市政の改革につながらない議会の現状に議員がやがて諦め、去るようなことがあれば、それは人材の損失でもある。
 議員活動の労力と知見の集約は、だが、なぜ、その質が高くても、効くとは限らないのだろうか

(2)「ひとりでする質問」の限界
 首長によっては、あるいは答弁する立場の職員によっては、議員から一般質問で指摘を受けることを、自分を批判し反旗を翻していることだとみなすことがある。そうなるとそもそも一般質問は「聞く耳」を持たない相手に訴える難行となってしまう。実際、自分に近しい「首長与党」の議員と反目的な「首長野党」の議員とで答弁の濃淡を変え、後者にはつれない答弁で済ませることを求める首長もいるという。ただ、もしそうした状況があるなら、それは議長が問題にし、質問に対し誠実な対応を求めるべきであろう。
 よい一般質問であっても生かされないことがあり得るのは、何より、「ひとりでする質問」だからである。「ひとりでもできる市政改革」になりうる反面、その指摘は「議員のひとりが言っていること」にすぎないともされうるのである。
 確かに、合議体として議論による意思決定を行うことが議会の本来機能であって、一般質問は首長と行政機構との議論にはなり得ても、その本来機能に直結はしていない。議員ひとりの「◯◯を実現します」という公約は、そのひとりに投票した有権者に支持されていても、市民の意思とはいえない。議会改革の状況を問う調査でも一般質問については質問形式と反問権が設問となるくらい(6)だが、それは議会改革の本筋は「議論する議会」という議会の本来機能の活性化と、それを支える市民参加・情報公開だからである。

(3)一般質問は「ひとりでする」ものでなくてはならないか?
 だが、では、一般質問は、そうした「議員が議会の本来機能のかたわらでひとり行うもの」として、政治的状況などがうまく働いた場合にまれに監査機能や政策提案機能が果たされるもののままでよいのだろうか? 議員にとっても「本来機能のかたわら」で政治家としての意見を開陳するボランタリーな場にとどまるものでよいのだろうか? 一般質問は「ひとりでする」ことで完結しなければいけないとはどこにも書かれていない。政治状況の影響を受けないことはあり得ないとしても、「ひとりでする」ことを超えて、「よい一般質問」が受け入れられやすい、つまり監査機能や政策提案機能を果たしやすくする環境を、制度を、認識をつくっていくことはできないか

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