北九州市上下水道局下水道計画課
はじめに
下水道事業は、施設整備を拡大する時代から、限られた人員と財源の下で既存施設を安全に維持し、計画的に更新する時代へ移っている。2025年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、下水道施設の老朽化と管理体制の確保が、住民生活の安全に直結する課題であることを改めて示した。2026年7月に公布された「下水道法等の一部を改正する法律」でも、安全性を最優先とするマネジメントとともに、複数の下水道管理者による連携など事業基盤の強化が掲げられている。
こうした中、北九州市は2026年4月1日から、隣接する芦屋町の公共下水道事業(汚水)の主要事務を受託した。本稿では、約10年にわたる検討の経緯、自治体間連携の仕組み、受託開始後の運用上の要点と今後の展望を紹介する。
1 「整備の時代」から「管理の時代」へ
北九州市は、工業化の過程で深刻化した水質汚濁を克服するため、下水道整備を積極的に進めてきた。現在、下水道普及率は99.9%に達し、事業の重点は、未普及地域の解消から、膨大な施設ストックの維持管理・改築更新へと移っている。一方、人口減少による使用料収入の減少、施設の老朽化、技術職員の不足は、自治体の規模を問わず共通の課題である。
国は2015年の下水道法改正で広域連携に向けた協議会制度を設け、その後、都道府県に汚水処理の広域化・共同化計画の策定を要請した。福岡県も県内を七つのブロックに分けて検討を進め、2023年3月に「福岡県汚水処理事業広域化・共同化計画」を策定した。下水道サービスを将来にわたり維持するためには、各自治体が単独で全ての人材・施設・機能を抱えることを前提とせず、地域全体で補完する視点が必要になっている。
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