元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄
本稿では、「議案作成と議案審議─〈議案作成・議案審議〉の前提、議案のチェックポイント、議案審議後の対応策」と、これらに関する事項等について再考します(なお、次稿以降では、「一般質問」について取り上げる予定です)。
〈議案作成・議案審議〉の前提!
はじめに、議案のチェックポイントを考えるに当たり、その前提となる事項として、「議案作成・議案審議の前提を考えることの有用性」「議案作成・議案審議の前提となる『情報提供(情報公開)』『参加』『連携・協力』」「議案作成・議案審議のための議員・議会の心得、話し合い、共有」「行政のスケジュールを踏まえているか」「必要な知識・情報等があると見込まれるか」「複数選択肢から、どう議案内容になったのかをまとめる」の6項目について考えます。
【ポイント1】〈議案作成・議案審議〉の前提を考えることの有用性
議会、委員会、会派ないし議員個人が議案を検討・作成したり、首長提案議案を検討・採決するに当たっては、有効なチェックポイントがあります。チェックポイントを活用することにより、多少の手間は増えますが、同調バイアス(周囲の意見や行動に同調して合わせようとする傾向(例えば、「場の空気」や忖度(そんたく)))、ジェンダーバイアス(性別に基づいて個人の能力や適性を判断してしまう傾向(例えば、男女の固定的役割分担))、正常バイアス(危険な状況に直面しても、「大丈夫だろう」と考え、適切な行動をとらない傾向(例えば、財政が厳しくとも財政破綻を避けうる、進出した企業はずっと撤退しないという認識))などの様々なバイアスを伴う誤った政策(議案)を防ぐことになります。議案という政策を適正に作成・審議するためには、そのためのチェックポイントが必要となります。
チェック内容は、議案として作成されるまでの議案提案前・議案として提案され採決されるまでの審議中・審議された後(=議決後)のいずれであっても、その内容が市民に公表され、議決前・議決中であれば市民の意見を聴き、議決後であれば市民の評価を聴くことが自治には求められます。市民の立場から見れば、議会の依頼がなくても主体的に評価できる環境が整っていることも大切です。【ポイント2】からは、そのうち議案として作成されるまでの議案提案前におけるチェックポイントを取り扱います。
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