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2024.11.26 New! 政策研究

第56回 組織性(その2):破綻・再生

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之

はじめに

 2006年6月に、いわゆる夕張ショックが、新聞報道によって表面化した(1)。「炭鉱から観光へ」を標語に、炭鉱閉山後の地域振興のために、夕張市は積極的な観光開発政策を展開した。しかし、民間の観光事業の採算がとれたわけではない。そのために、「第二の閉山」を呼ばれる状況に直面する。観光事業撤退は地域衰亡を意味するから、観光事業を支えるために市が財政負担を負うことになる。そのために、市の財政問題が深刻化していった。市財政の維持の観点からは、早期の「損切り」が必要だったかもしれないが、それは「第三の閉山」を意味するから、政策的に決定することは困難である。そもそも、市政が早期「損切り」ができるぐらいであるならば、観光事業撤退の段階で、市政が支援をしないことができたであろう。
 こうして、市財政は自転車操業に追い込まれ、いわゆる「一時借入金のジャンプ」を繰り返すことになる。一時借入金は、年度内に借入れして年度内に返済するので、年度予算上は相殺される。しかし、自治体の会計年度は、出納整理期間という重複がある。そこで、出納整理期間(t+1年4~5月、t年度であるとともにt+1年度でもある)において、t+1年度の一時借入金で、t年度の一時借入金の返済を行うことができる。こうしてt年度は、一時借入金は年度内返済がなされる。このときに生じたt+1年度の一時借入金は、t+1年度内に返済しなければならない。当然ながら、t+1年度内の歳入から充てられる返済資金はない。そこで、t+2年度(t+2年4~5月)の一時借入金で現金を調達して、t+1年度分の返済を行う。このように一時借入金の年度をまたがるやりくり(「ジャンプ」)を行えば、永遠に資金調達できるように見える。

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金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学))

この記事の著者

金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学))

東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 1967年群馬県生まれ。東京大学法学部卒業。 東京都立大学助教授、オランダ国立ライデン大学社会科学部行政学科客員研究員、東京大学助教授を経て、06年より現職。 専門は自治体行政学・行政学。主な著書に『自治制度』(2008年度公共政策学会賞受賞)、『原発と自治体』(2013年度自治体学会賞受賞)等。

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