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2024.09.25 New! 政策研究

第54回 参照性(その5):棲み分け

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之

はじめに

 ある自治体で始まった政策・制度は、他の自治体が遅かれ早かれ参照することで、伝播(でんぱ)・波及していく。この結果、最終的にはすべての自治体に普及することが、一つのあり得る理念型である。前回(第53回)で触れたように、普及曲線が100%に到達することから逆算すれば、自治体の参照時期が正規分布されると想定して、3%、16%(~20%ぐらい)、50%、74%(~80%ぐらい)、100%という採用時期による自治体の立ち位置の分類が描かれる。
 もっとも、現実には、ある政策・制度Xが、100%あるいは、極めて100%に近いような普及率に至るとは限らない。つまり、新しい政策・制度Xが登場したからといって、従前の政策・制度Wを放棄するとは限らない。あるいは、ある新しい政策・制度Xを参照したからといって、そのまま採用するとは限らず、さらに変異を起こした政策・制度Yを採用するかもしれない。今一度、変異を起こして、政策・制度Zが伝播するかもしれない。あるいは、登場した政策・制度Vは衰微・消滅するかもしれない(図1)。つまり、自治体は、政策・制度に関して、保守と革新、守旧と改革、持続と減衰、伝統と挑戦、不易と流行、あるいは、比喩的にいえば遺伝と進化、の双方の動因を持っている。

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金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学))

この記事の著者

金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学))

東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 1967年群馬県生まれ。東京大学法学部卒業。 東京都立大学助教授、オランダ国立ライデン大学社会科学部行政学科客員研究員、東京大学助教授を経て、06年より現職。 専門は自治体行政学・行政学。主な著書に『自治制度』(2008年度公共政策学会賞受賞)、『原発と自治体』(2013年度自治体学会賞受賞)等。

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