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2023.03.27 政策研究

第36回 競争性(その5):水平的競争と垂直的統制

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之

水平的競争と垂直的統制

 「足による投票」論は、住民が移動することによって、市区町村同士など、同じ層(レベル)の中の自治体間を競争させることが前提になっている。一般に、権力関係とは、競争させる側が、競争する側より、有利である。いわゆる「分割統治」や「三角関係」と同じであるし、ネットワーク論の中心性の議論からも想定される。「足による投票」は、住民集団が一枚岩で、同質の住民集団をめぐって自治体同士が競争させられるときに、住民集団は各自治体を統制することができる。ただ、すでに述べたように、住民集団は一枚岩ではない。そのため、自治体の側から住民間を競争させ、選別することもできる。それゆえ、自治体が住民を統制している側面もある。実際の権力関係がどちらに有利に作用しているかは、実証問題である。
 自治体間を競争させることができるのは、住民に限らない。むしろ、単一の主体としての国(中央政府)の存在が大きい。国は、多数の個人からなる住民と異なり、組織として単一である。それゆえ、国は、自治体間を競争させ、国の意向に沿う自治体を増やすように、垂直的統制をすることができる。このように、水平的競争は垂直的統制と相性がよい。もちろん、垂直的統制をするときに、水平的競争を利用しないこともできるので、水平的競争と垂直的統制の関係は一体不可分ではない。

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金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学))

この記事の著者

金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学))

東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 1967年群馬県生まれ。東京大学法学部卒業。 東京都立大学助教授、オランダ国立ライデン大学社会科学部行政学科客員研究員、東京大学助教授を経て、06年より現職。 専門は自治体行政学・行政学。主な著書に『自治制度』(2008年度公共政策学会賞受賞)、『原発と自治体』(2013年度自治体学会賞受賞)等。

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