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2019.05.13 議会改革

二元代表制を越えて討議広場代表制へ[PR]

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 『議員NAVI』誌上にて長らく連載を頂いて参りました金井利之先生の「新・ギカイ解体新書」が一冊の本になりました。新刊『自治体議会の取扱説明書(トリセツ)―住民の代表として議会に向き合うために』(第一法規刊)が2019年5月18日より発売開始します!自治体議会を取り巻く諸現象について鮮やかに描き出し、これからの議会を考えるための視座を提供する一冊です。以下、まえがきより抜粋してご紹介します。
 

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 自治体議会に関しては、様々な問題が指摘されている。いわゆる議会・議員不信論は、議員の姿が見えない、議員は多すぎる、議員報酬は高すぎる、という削減論につながることが多い。1990年代からの市場原理主義的な構造改革は、公的な仕事に価値を見いださず、「減らす」という処方箋しか描けず、また、そのような時流に乗ってポピュリスト的に、当の公的な仕事をするはずの自治体議員のなかにも、「減らす」ことを公的な仕事として位置付ける者が増えてきた。

 ところで、実態として生じているのは、議員のなり手不足である。実際、立候補者数は定数ギリギリをようやく確保できることとか、引退しようと思うが後継者がいないので辞められないとか、様々な現象が発生している。こうなると、議員の数は多すぎるのか、少なすぎるのか、よく分からなくなってくる。定数が多すぎるから、立候補者数が足りない、ということなのかもしれない。あるいは、多すぎると思う背景は、公的な仕事に価値を見いだしにくいので、立候補する気が起きないのかもしれない。ともあれしばしば見られるのは、立候補者数の減少に合わせて定数削減をするという現場の実態であり、一見すると、議員不信論に答えたリストラ策のように見えて、何とか、定員割れを避けるという苦肉の対処だったりする。無投票が多くなっているが、欠員ではなくギリギリ無投票まで持って行ったということかもしれない。

 しかも、自治体議員は、前期高齢者、男性、自営業者または年金生活者、という大きな偏りがある。もちろん、日本列島は少子高齢化しているので高齢者が多くなるのは自然かもしれないが、住民構成に比べてもあまりに高齢化している。女性活躍などといわれながら、男女共同参画の水準は、諸外国と比べて恥ずかしいばかりである。男女共同参画すらおぼつかないなかで、LGBTQが問題化されており、数周回遅れの絶望的な後進状態である。被用者が議員になることはほとんど不可能である。そもそも、構造改革と働き方改革のせいで終身雇用正規労働者=被用者(サラリーマン)自体が消滅しつつある。非正規・ワーキングプアが増えているのにも関わらず、議員に参入する暇がないので、この面でも数周回遅れである。

 このようななかで、住民個人が議員になろうと思うと、さまざまな壁が存在する。例えば、女性が議員になろうとすると、依然として「男尊女卑」あるいは性的役割分担を前提とした先例と慣習とセクハラに阻まれる。女性が表に出にくい、議員になっても男性社会のなかでの「母親」か「ホステス」の役割しかない、などであり、さらには、そうした慣習を拒絶すると「女傑」として排除される。

 正規労働者も非正規労働者も、日々の経済活動で疲弊している。加えて、行政サービスの貧困さによって、アンペイドワークである家事・育児・介護に追われて、生活活動にも疲弊している。本来は、行政サービスの充実のために、これらの人々は生活上のニーズを自治体に伝えなければならないのであるが、行政サービスの必要な人は疲弊しすぎて、議員になる余力が残っていない。経営者も人手不足で悩んでおり、配下の労働者がそのような余力があるくらいならば、労働強化をしていく。また、自治体は、財政と人員のリストラのなかで、行政サービスを充実させるどころか削減して、地域住民による地域活動に転嫁する。こうして、わずかな余力は、自治体が「住民自治」として喧伝する地域奉仕活動によって、吸い尽くされる。

 住民は疲弊し、議員になることすらできず、住民の声は自治体に伝わらず、実際に議員になるになった人は住民のニーズに鈍感になり、ますます議会・議員不信は増えるが、住民ニーズに即した行政サービスは提供されない。このような苦境にあるのが、零落した自治の実態である。自治体議会の改善だけで、こうした難問は解けないが、自治体議会の改善も含めて、問題に取り組む必要がある。住民も住民代表としての議員も、自治体議会をどのように取り扱うのかが、問われている。自治体議会の取扱のためには、自治体議会の実態を冷静に見つめた上で、自治体議会の機能強化を目指していくしかない。

 本書は、自治体議会の取扱を通じて、自治体の取扱を改善することを目指している。住民自治とは、住民が自治体行政を民主的統制して、必要充分な行政サービスを提供させることである。そのためには、首長と行政職員と議員を使いこなさなければならない。これらの公僕=全体の奉仕者を住民と住民代表としての議員が使いこなす場が、《討議広場(フォーラム)としての議会》である。

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◆書籍情報torisetu『自治体議会の取扱説明書―住民の代表として議会に向き合うために―』
金井利之(著)(定価2,592円 (本体:2,400円))
 議会・議員は住民の「代表」として何をなすべきかという立ち位置を、自治体議会の取扱を通じて客観的に捉え、自治体議会をとりまく首長、議会運営、政策、財政、住民自治等について、現実と理想のギャップ、本音と建前の乖離を具体的に分析し、二元代表制の枠を超えて自治体議会の本来の意義を解説する。

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金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授)

この記事の著者

金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授)

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