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2019.03.25 政策研究

第26回 住民自治を進める会派・地域政党の構築(下) ――〈住民、会派・地域政党、首長〉の三者間関係から考える――

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山梨学院大学大学院社会科学研究科長・法学部教授 江藤俊昭

Gikainokyoukasho_icon今回の論点:新たな議会を進める会派・地域政党を考える

地方議会の運営において、会派は重要な役割を果たしている。小規模議会などは別にして、一般に議員は、議会では会派に属しており、会派の一員として活動する。つまり、会派は議会運営における重要な単位である。実際の機能としては、「与党」として首長をつくり出し、「野党」として首長を批判し、また役職者の割り当てを行う単位として活動することが多い。共通の利害と理念を有する政策集団として活動するといったことは、それほど重視されていない場合もある。
 政策を分析することなく「与党」、「野党」として活動することは、新たな議会の路線からの逸脱である。また、水面下で行われる役職者の割り振りも、透明な議会の理念からすれば問題が残る。これらの機能は極力排除すべきである。新たな議会を創出し住民自治を推進する会派を考えたい。連載第23回・第24回に会派マニフェストを強調したのは、それが政策集団としての会派による結果であるとともに、それを生み出す原因でもあるからだ。
 「会派」といっても多様である。小中規模の自治体での「緩い会派」(弱い規律・離合集散)と大規模議会における「硬い会派」とでは、その特徴・役割も異なり、改善の方向もそれぞれ異なる。それぞれの特性を意識して二元的代表制における会派の役割を位置付けたい。
 もちろん、地方議会議員選挙は政党選挙ではなく、個人名を重視する選挙である。議員が個人を超えて会派を形成する意味を考える場合、住民代表を意識する側面と、狭い意味での当選を重視した後援会重視の活動といった構造(選挙制度)も視野に入れる必要がある。
 本連載の問題意識は、議会内集団という性格を持つ会派を、住民自治の充実の視点からその特性を変化させることである。その意味で、マニフェストを提出する恒常的な会派も想定する(連載第23回・第24回参照)。
 今日、社会に根づいた会派、議会内外の会派(正確には会派は議会運営の単位なので定義上不正確であるが)ともいってよい地域政党が台頭している。その射程を明らかにすることも必要である。会派と地域政党との関係を問うことでもある。その際、二元的代表制を促進する地域政党と、二元的代表制とは異質な地域政党(首長主導型地域政党)を意識しながら、前者の課題を確認することも今回の目的である。
 ① 多様な会派とその作動を理解する。
 ② 二元的代表制における会派の役割を再検討する(以上、今回)。
 ③ 政策集団としての会派形成にとっての阻害要因を理解し、その打開の方途を探る。
 ④ 多様な地域政党の登場を理解するとともに、二元的代表制を推進する地域政党を確認する。
 (補論として首長主導型地域政党の意味とその射程を確認する。)
 議会によって、会派の役割は異なっている。会派を設置していない議会もある。二元的代表制を担う議会にとっての会派の役割を考えることによって、それぞれの議会において会派とは何かを考える素材にしていただきたい。また、会派が住民に向き合う手法も考えたい。地域政党を検討するのは、この意味の1つである。

3 政策集団としての会派

(1)政策集団としての会派の意義
 会派は、前述したような問題(連載第25回「2 二元制における会派の問題とその要因」参照)があるにもかかわらず、小規模議会を除いて存在しているし、今後も存在し続けるだろう。議会内外への議員の影響力行使はその1つの要因である。会派の存立基盤はそれにとどまらない。より積極的な存立根拠がある。定数が多くなれば、政策集団としての会派が必要になるのだ。また、委員会制を採用すれば、議員はすべての委員会に参加することはできないから、会派を形成してその会派メンバーがいずれかの委員会に属することにより情報獲得、影響力行使を行うほかない。会派はいわば政策集団として活動することに真骨頂がある。そうだとすれば、「緩い会派」より「硬い」とまではいわなくとも、政策集団として継続的な会派が想定される。
 新たな会派・地域政党を政策集団として位置付ければ、それは重要な存在といえる。ただし、国政の争点とそれぞれの地方における争点は異なる。したがって、同一の政党に属していても、政策集団として分かれることや、国政では対立する会派と連携すること、また地方独自の会派を組織することも肯定される。

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江藤俊昭(山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士)

この記事の著者

江藤俊昭(山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士)

山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士(政治学、中央大学)。 1956年東京都生まれ。1986(昭和61)年中央大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。専攻は地域政治論。 三重県議会議会改革諮問会議会長、鳥取県智頭町行財政改革審議会会長、第29次・第30次地方制度調査会委員等を歴任。現在、マニフェスト大賞審査委員、議会サポーター・アドバイザー(栗山町、芽室町、滝沢市、山陽小野田市)、地方自治研究機構評議委員など。 主な著書に、『続 自治体議会学』(仮タイトル)(ぎょうせい(近刊))『自治体議会の政策サイクル』(編著、公人の友社)『Q&A 地方議会改革の最前線』(編著、学陽書房、2015年)『自治体議会学』(ぎょうせい、2012年)等多数。現在『ガバナンス』(ぎょうせい刊)連載中。

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