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2018.02.26 政策研究

第2回 担い手を生み出す秘策は無作為抽出~福岡県大刀洗町~

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地方自治ジャーナリスト 相川俊英

無作為抽出の住民協議会、発祥の町

 福岡市内の西鉄福岡(天神)駅から大牟田線の電車に乗り、宮の陣駅へと向かう。40分ほどで駅に到着すると、ここで甘木線の電車に乗り換える。いかにもローカル線といった風情の甘木線は単線で、2両編成だ。電車がのどかな田園地帯をトコトコとゆっくり走ること約30分。6つの駅を通過し、電車は目的地である大堰駅のホームに静かに滑り込んだ。小さな無人の駅舎を出て踏切を渡り、広々としたコンビニの駐車場を越えると、目の前に大刀洗町庁舎が現れた。駅から歩いて1分もかからない好位置にあった。

大刀洗町役場大刀洗町役場

 福岡県の中南域にある大刀洗町は、筑後平野に包まれた農業の町。地域内を西日本鉄道(西鉄)や甘木鉄道の電車が走り、高速道路の入り口も近くにあるなど、交通アクセスの良さを誇っている。近年は隣接する久留米市のベッドタウンとしても注目されており、若い世代の転入の多さが際立つ。人口は1万5,613人、世帯数は5,263に上る(いずれも2016年12月末時点)。ちなみに財政力指数は0.43(2013年から2015年)で、経常収支比率は79%(2015年度)。健全な財政運営を続ける小規模自治体だ。
 大刀洗町の歴史は古く、町名の由来も南北朝時代にまで遡る。当時の武将「菊池武光」が合戦の際に川で血刀を洗ったという故事から、「大刀洗」という地名がついたという。昭和の大合併(1955年)時に大刀洗村と大堰村、本郷村の3村が合併し、大刀洗町となった。町内には隠れキリシタンが信仰を続けたという地区もあり、田園風景の中に赤レンガの古い教会が清らかにたたずんでいる。

1913(大正2)年に建造された今村天主堂1913(大正2)年に建造された今村天主堂

 そんな大刀洗町は「平成の大合併」をめぐって、全国各地の市町村と同様に、大もめにもめてしまった。当初は同じ三井郡下の北野町と隣接する小郡市との1市2町での合併を模索したが、住民投票を実施した北野町が枠組みからの離脱を決め、久留米市との合併に踏み切った。袖にされた形となった大刀洗町は小郡市との合併に動いたが、その是非をめぐって町は二分してしまったのだ。合併推進の町長派と単独路線を主張する人たちに割れてしまったのである。

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相川俊英(地方自治ジャーナリスト)

この記事の著者

相川俊英(地方自治ジャーナリスト)

地方自治ジャーナリスト。1956年群馬県生まれ。地方自治の取材を四半世紀以上にわたって続ける。2019年7月に「議員NAVI」にて連載中の「自治の担い手の再生」を加筆してまとめた『自治体職員のための住民と共につくる自治のかたち』(第一法規)を出版。この他に、『地方議会を再生する』(集英社新書、2017年)『奇跡の村 地方は人で再生する』(集英社新書、2015年)『反骨の市町村 国に頼るからバカを見る』(講談社、2015年)など多数。

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