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2018.02.26 議会改革

第20回 政務活動費・議会図書室の充実(下)

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山梨学院大学大学院社会科学研究科長・法学部教授 江藤俊昭

3 もう一歩:政活費を有効に活用するために――活動から成果へ

 政活費を適正に使えばいいというものでもない。重要なことは、効果的に活用すること、その活用によって住民福祉の向上につなげることである。
 すでに指摘した透明性確保の系譜である是正手法はあくまで、どの本を買いました、どこを視察しました、という活動指標である。それを超えて、政活費の活用が住民の福祉向上に役立ったかの成果指標が必要になる。実際には、成果に関する外部評価も必要だろうが、その評価の検証は困難であり、まずは自己評価から進めるとよい。今日、北海道福島町など、議会・議員白書を発行し、その中で自己評価を掲載している議会も増加してきた。それと連動させることも考えてよい。
 そのためにも、ぜひ視察の3点セットを実現したい(キーワード参照)。これらは、視察に際して重要な情報を、議員そして住民が共有するものである。同時に、このためには視察報告会も付け加えるべきであろう。
 今日、会派による視察も増加しているが、政活費を議会・会派に交付しているためか、「議会だより」でもその報告は少ない。領収書の公開等も重要だと思われるが、それ以上にその成果が住民には不明なことが問題である。委員会報告と同様に、当該自治体との関係やその後の監視政策提言との関連を住民に報告することが重要である。個人による視察も同様である。
 これらの報告は、当面は自己評価となるが、議会として報告を受け取り、議会全体のものとすることも必要である。飯田市議会は、会派視察に基づく「政務調査研究報告書」を作成している。同報告書によれば、「市議会各会派では、先進地視察などの調査研究活動を行い、今後の政策立案、提言に活かし、ひいては市民益につなげていくことを目的に毎年調査を実施し……、年2回報告会を行って」いる。冊子の作成・公開はもとより、全議員による報告会(公開)が開催されている(残念ながら、住民の参加はない)。今後、争点化される可能性のあるテーマであり、必要があれば議会から住民に呼びかけ、争点化すべき素材である。これは、政活費の公開の意味を超えて住民自治の推進の役割を担う。

☆キーワード☆
【視察の3点セット――政活費を住民福祉の向上につなげる手法】
 視察に当たって、テーマ・場所・ヒアリング対象者の報告といった形式ではなく、内容を明確にする必要がある。次の3点をセットとして提出する必要がある。
 ① 〔視察前〕当該自治体の課題を明確にして、それを解決するための先進(あるいは後進)地域を設定する。先進かどうか、そして当該自治体で役立つかどうかは客観性が求められるため、事前準備が必要である。
 ② 〔視察後Ⅰ〕視察から戻り、単に視察した内容を列挙するだけではなく、つまり現地レポートだけではなく、当該自治体の政策をどのように活用するかを具体的に明記する。
 ③ 〔視察後Ⅱ〕視察で得た課題解決の方向と実現性の予定を明記する。一般・会派代表者質問、委員会の所管事務調査などを想定している。その後、実際に行ったかどうかの検証はできる。
 *これらをホームページ等で公開する。
 *図書費でも同様の視点が必要である。当該自治体の課題を明確にして、その課題解決に役立つ書籍を購入する旨や実現性等を明記する。一般・会派代表者質問、委員会の所管事務調査などを想定している。その後、実際に質問や調査を行ったかどうかの検証はできる。

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江藤俊昭(山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士)

この記事の著者

江藤俊昭(山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士)

山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士(政治学、中央大学)。 1956年東京都生まれ。1986(昭和61)年中央大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。専攻は地域政治論。 三重県議会議会改革諮問会議会長、鳥取県智頭町行財政改革審議会会長、第29次・第30次地方制度調査会委員等を歴任。現在、マニフェスト大賞審査委員、議会サポーター・アドバイザー(栗山町、芽室町、滝沢市、山陽小野田市)、地方自治研究機構評議委員など。 主な著書に、『続 自治体議会学』(仮タイトル)(ぎょうせい(近刊))『自治体議会の政策サイクル』(編著、公人の友社)『Q&A 地方議会改革の最前線』(編著、学陽書房、2015年)『自治体議会学』(ぎょうせい、2012年)等多数。現在『ガバナンス』(ぎょうせい刊)連載中。

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