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2017.12.25 議会改革

第18回 議会事務局の新たな役割――議会との二人三脚による住民自治の進化・深化――(下)

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山梨学院大学大学院社会科学研究科長・法学部教授 江藤俊昭

3 もう一歩:議会事務局本体の充実を踏まえた機能の外部化

(1)議会事務局本体の充実と機能の外部化
 議会改革には、議会事務局本体の充実が不可欠である。後述するように、議会事務局の機能を抽出し、その一部の外部化を提案したい。ただし、それを作動させるためには、本体がしっかり作動することが前提となる。
 新たな議会を創り出すには、議会事務局の設置・定数条例の制定などとともに、議会と伴走する議会事務局とその職員の存在が不可欠である。議会改革が進んだ三重県議会や鳥取県議会には、それぞれの改革努力とともに、改革派知事が大いに影響している。当時の北川正恭知事や片山善博知事が、意欲ある優秀な職員を議会事務局に出向させている。「住民自治の根幹」が議会であることとともに、議会の作動によって行政改革は進むと理解していたためであろう。
 まずもって、議会事務局の充実が必要なのである。特に町村議会では、議会事務局職員数を増加させることが必要である。議会によっては、総務課職員との併任や、監査委員事務局・選挙管理委員会事務局を担っていることもある(3)。これでは、新たな議会を創り出すことは実質的に困難である。議員定数の検討も、議会改革の重要なテーマではあるが、同時に議会事務局職員定数やその役割も重要な争点とすべきである。
 厳しい職員定数管理の下で議会事務局職員の大幅な増加が困難な場合がある。その場合、議会事務局の役割を機能として理解して、その外部化も模索してよい。議会の支援の役割から、①新たな総務、②新たな議事、③政策法務・政策財務、といった機能が、もう1つの二元的代表制の作動の役割から、④住民との連携、⑤首長等との調整、といった機能がある。
 ここで注意していただきたいのは、新たな議会にはこれら事務局の5つの機能は不可欠であり、外部化するとしても、議会事務局本体でその機能を丸投げしては、実際にその機能を当該議会事務局で作動させることはできないことである。事務局長を中心に、事務局職員がチーム議会事務局として配置され、5つの機能を意識しながら、その外延にそのつど外部化された機能を担うアクター・制度(団体や個人、以下一括して「制度」という)が配置されるイメージである。もちろん外部化された機能を担うアクターとは、単なる〈発注者―受け手〉関係を超えて、協働で担う場合もあるが、あくまで議会事務局機能であり、チーム議会事務局の延長である。
 そのためには、議会事務局職員の研修がまずもって必要である。議員研修と同時に行うことも想定してよいが、独自研修も必要である。議会改革が進み、議員と議会事務局職員との協力が進んでいる議会でさえ、「議員がいるところではなかなか本音が言えない」という職員もいるからである。なお、岩手県市議会議長会が主催して設置した「いわて議会事務局研究会」は、重要な研修の場となっている。
 また、執行機関の法制担当を議会事務局政策法務に併任させること(神奈川県横須賀市等)、及び期限付任用(弁護士等)を活用してもよい。なお、前者については、二元的代表制なので、緊張が生じた場合、活用しにくいという意見もあるが、資源が限られている中で、議会側からの活用として評価してよいのではないか。緊張が激化し問題が生じた場合には、議会は別のルートで政策法務の外部化を模索すればよいだろう。

(2)議会事務局機能を外部化する制度
 外部化を担う制度及びそれと議会・議会事務局との関係を以下検討するが、例えば、政策法務・政策財務は、専門的知見に外部化するだけといった1対1対応ではないことに注意が必要である。政策法務は、参考人、議会アドバイザー等、様々な制度によって外部化できる。以下、制度を中心に最近の動向を確認する(〔 〕内の番号は既述した5つの機能(①新たな総務、②新たな議事、③政策法務・政策財務、④住民との連携、⑤首長等との調整)と関連があることを示している)。なお、稀有(けう)な事例、あるいは筆者がかかわった事例には、自治体名を明記している。

【参考人・公聴会制度の活用(請願・陳情の代表者の意見陳述の機会)〔①②③〕】
 参考人・公聴会制度の活用は広がっている。同時に、請願・陳情を住民からの意見として積極的に受け止め、意見を表明する機会を提供する議会も増加している。さらに、議会基本条例で傍聴者の意見表明の機会を設ける議会(栃木県大田原市議会)や、休憩時にではあるが実際に傍聴者に意見を求める試みもある(長崎県小値賀町議会)。これらの制度によって、専門家、利害関係者、関心のある者などが意見表明する場ができる。この文脈では、議案が提出されると、そのうち重要なものをパブリックコメントにかける議会の試みがある(三重県四日市議会)。
 筆者がかかわった経験では、議会基本条例や議会改革についての参考人(神奈川県議会等)では主に①②③、住民投票条例についての参考人(静岡県議会)では主に③をめぐるものであった。参考人制度は、特定のテーマで深く議論でき、しかも条例上実費弁償、報償費あるいは日当程度で開催できるので、経済的に見ても実践的である。

【専門的知見の活用〔①②③〕】
 専門的知見の活用は、地方自治法改正に伴って可能となった制度である(自治法100の2)。個人にも、また複数にも依頼できる。後者の場合、実質的に附属機関の役割も担う。議会改革が進んでいる議会は、この制度を積極的に活用している。例えば会津若松市議会などでは、議会からの政策サイクルに活用している(水道事業等)。
 筆者の経験では、議会基本条例(①②③:山陽小野田市議会、東京都国立市議会等)、議員報酬(①④:神奈川県葉山町議会)にかかわるテーマであった。

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江藤俊昭(山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士)

この記事の著者

江藤俊昭(山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士)

山梨学院大学大学院研究科長・法学部教授博士(政治学、中央大学)。 1956年東京都生まれ。1986(昭和61)年中央大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。専攻は地域政治論。 三重県議会議会改革諮問会議会長、鳥取県智頭町行財政改革審議会会長、第29次・第30次地方制度調査会委員等を歴任。現在、マニフェスト大賞審査委員、議会サポーター・アドバイザー(栗山町、芽室町、滝沢市、山陽小野田市)、地方自治研究機構評議委員など。 主な著書に、『続 自治体議会学』(仮タイトル)(ぎょうせい(近刊))『自治体議会の政策サイクル』(編著、公人の友社)『Q&A 地方議会改革の最前線』(編著、学陽書房、2015年)『自治体議会学』(ぎょうせい、2012年)等多数。現在『ガバナンス』(ぎょうせい刊)連載中。

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