狛江市教育委員会教育部理事兼指導室長 柏原聖子
はじめに
日本の学校教育は、学級という集団での一斉指導を展開することが主である。学力の定着は、帰するところ児童・生徒の個人の努力である。しかし、学びの過程で学級の集団の社会的な影響を強く受ける。学校が学校たるゆえんは、仲間がいること。そこに小さな社会があることである。子どもたちに学級の仲間意識を持たせ、建設的に関わり合うことで、学びに広がりや深まりが生まれる。一方で、人と人が関わりを持つ中ではトラブルが発生するものである。学校はトラブルを起こさない場所ではなく、トラブルが起きたときをチャンスとして克服する、あるいは挽回する場でもあり、そこから、子どもたちは人間関係の築き方を学ぶのである。しかし、人間関係のつまずきを克服できなかったり、学習に遅れや見通しの不安があったりすることが誘因となり、学校に行きづらさを感じ、不登校へと発展することがある。
1 不登校児童・生徒の状況
文部科学省が毎年実施している調査によると、平成27年度の義務教育段階での不登校児童・生徒数は12万6,009人で、内訳は小学校2万7,581人、中学生9万8,428人であった。平成24年度以降、3年連続で増加の一途をたどっている。小学校は50.5%、中学校は85.4%の学校で不登校児童・生徒が在籍している。そして、学年を追うごとに増加をしていることが分かった。このように、不登校への具体的な対策を講じていくことが喫緊の課題であるといえる。次項で説明する法の趣旨を理解した上で、不登校問題に取り組んでいくことが重要である。
不登校の背景や誘引は千差万別である。また、不登校児童・生徒の50%は発達に課題があるのではないかともいわれている。不登校児童・生徒の中には、豊かな個性を持ち、特定の分野ではすばらしい才能を発揮するが、周囲の状況になじめず、社会の中で不適応を来すことがある。この場合、成長とともに時間の経過の中で一段と目立つことがあり、早期に的確な対応を行う必要性が指摘されている。そして、一人ひとりへの対応や支援は、人生設計全体において必要である。