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2014.11.10 選挙

調査分析 地方議会は有権者にどう見られているのか(上)

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相次ぐ議会不祥事

 この夏発生した東京都議会「セクハラやじ問題」、兵庫県議「号泣会見」に端を発した議会不祥事報道は有権者の耳目を集め、報道番組だけでなくバラエティ番組でも取り上げられるほどのニュースとなった。発生から4か月。その間も公職選挙法違反による地方議員の逮捕、政務活動費の不正支出のほか、9月にはやじ問題を受けて都議会に立ち上がった「男女共同参画社会推進議員連盟」会長の発言が批判を受け、兵庫県でも報道機関による領収書偽造疑惑の追及に「逃走」した県議が出るなど、地方議員の不祥事が相次いでいる。議員や議会が、今回の不祥事を「自分事」として捉えられず、有権者に正々堂々と対応できていない結果といえる。
 このような中で「議会不祥事の影響は?」と問われても、悲観的な想像しかできない方も多いかもしれない。しかし、本誌をご覧の皆様にはこうお伝えしたい。「今回の不祥事はチャンスだ」、と。特に政策型の議員にとっては、今回の不祥事をチャンスに変えることができる、ということだ。

議会不祥事で喚起された有権者意識

 全国で報じられた地方議会関連の不祥事は、有権者の意識の変化をうまく捉えられていないことが最大の原因のひとつだ。このままでは、「議会不要論」を覆すこともできず、議員定数・議員報酬・政務活動費の削減という「量的削減」を避けられない。また、次回の統一地方選挙は、現職が不利な選挙になることは間違いない。
 では、どうすればいいのか。超党派の政策型地方議員で構成される団体「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」は、先述の東京都と兵庫県の騒動を受け危機感を持ち、有権者目線で、①今の地方議会はどのように見られているか、②選挙で何を判断材料にして投票しているか、③地方議会・議員はどうあるべきか、を調査した。調査は7月16日から18日で実施し、全国男女有権者の1,122人の回答を得た(調査概要、設問は下記参照)。

調査設問一覧
Q1 あなたが現在支持している政党を教えてください。
Q2 あなたは普段、地方議会や議員の活動に関心を持っていますか。また、東京都議会のセクハラやじや兵庫県の政務活動費不正受給の問題は、その関心に影響を及ぼしましたか。
Q3 あなたは普段、選挙の投票に行きますか。また、東京都議会のセクハラやじや兵庫県の政務活動費不正受給の問題は選挙に対する意識に影響を及ぼしましたか。
Q4 あなたが日本の政治家や機関・団体について感じている信頼度を教えてください。
Q5 選挙の際に候補者が出すマニフェスト(公約)の中身について、あなたのお考えをお聞かせください。
Q6 あなたが住んでいる地域の議員(都道府県議会、市区町村議会)について、あなたが持つ印象を教えてください。
Q7 あなたが選挙で投票をする際に、候補者を選ぶ理由は何ですか。
Q8 あなたが選挙の投票先を決める際に、参考にしているメディアや情報ツールは何ですか。
Q9 あなたは地方選挙(首長・議会議員選挙)で投票する際に、考慮する問題は何ですか。
Q10 地方議会・議員の現状や今後について、感じていること、ご意見、あるべき姿などを率直にお答えください。(自由回答)

調査概要(ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟×政治山調査)
利用サービス 政治山リサーチ
調査方法 インターネットリサーチ
実施期間 2014年7月16日〜18日
調査対象 全国の男女有権者
有効回答数 1,122人
割り付け:20歳〜60歳以上の6段階ごとに約200回答収集(男女同数)
[詳細]http://www.maniken.jp/gikai/date/140807LMresearch_PR.pdf

 今回の騒動の有権者への影響を率直に聞いたのが、Q2「議会に対する関心への影響」とQ3「選挙での判断への影響」だ。
 Q2では、地方議会や議員に対する普段の関心と、不祥事の影響を聞いている。「もともと関心があった」と回答した人の中で、「より関心が高まった」と回答したのが20.7%だった。一方、「もともと関心がなかった」中でも、「より関心が高まった」のは18%で、今回の不祥事で約4割の有権者が「関心が増した」と答えたことになる(図1参照)。

図1:議会に対する関心への影響

 また、Q3でも同様に、普段の投票意向と不祥事の影響を聞いており、「必ず投票に行く」、「どちらかというと投票に行く」という人のうち、「しっかり選挙で選ぼうと思った」と回答したのが合計41.6%に上った(図2参照)。
 議会・議員への関心にしても、投票意向にしても、「もともと積極的ではない人」に対しては、関心・投票意欲の低下を招いているのは事実だ。ただ、今回の調査では、議会・議員への関心が高い人や投票に行く意欲のある人にとっては、「より関心を持とう」、「選挙でしっかり選ぼう」という有権者の意識変化が起きたことがわかる。議会の不祥事が有権者に及ぼした影響は、マイナスだけではなく、プラスの影響もあったということだ。議会や選挙に関心を持ってもらう機会になった、これは大きなチャンスといえるだろう。

図2:選挙での判断への影響

青木佑一(早稲田大学マニフェスト研究所議会改革調査部会)

この記事の著者

青木佑一(早稲田大学マニフェスト研究所議会改革調査部会)

早稲田大学マニフェスト研究所議会改革調査部会 1985年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒、同大大学院公共経営研究科修了。選挙サイト、世論調査会社勤務を経て、株式会社パイプドビッツ「政治山」で行政・議会・議員を対象に記者職、選挙情勢調査・分析に従事。現在、早稲田大学マニフェスト研究所で議会改革、選挙事務改革、人材マネジメント部会を担当。 Facebook:yuichi0613

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