弁護士 滝口大志
「地方自治勉強会」について
この勉強会では、議員と弁護士とが、裁判例や条例などを題材にして、それぞれの視点からざっくばらんに意見交換をしています。本稿では、勉強会での議論の様子をご覧いただければと思います。発言者については、議員には〔議〕、弁護士には〔弁〕をそれぞれ付しています。
なお、勉強会は自由な意見交換の場であり、何らかの会派、党派としての見解を述べるものではありません。
〔今回の勉強会の参加者(五十音順)〕
石田しんご(品川区議会議員)
内田雅也(弁護士・第一東京弁護士会・法律事務所アルシエン)
大倉たかひろ(品川区議会議員) 加藤たくま(中野区議会議員)
金岡宏樹(弁護士・愛知県弁護士会・SAK法律事務所)
滝口大志(弁護士・第一東京弁護士会・丸の内仲通り法律事務所)
松尾浩順(弁護士・第一東京弁護士会・シグマ麹町法律事務所)
渡邉健太郎(弁護士・第一東京弁護士会・堀法律事務所)
はじめに
滝口大志〔弁〕 裁判所と聞くと、世の中の様々な出来事に「白黒」をつけるイメージがあるかもしれません。しかし、団体の内部でトラブルが起こったときには、外野が口出しするのではなく、内部での解決に委ねるべきだという考え方があります。
内田雅也〔弁〕 「部分社会の法理」ですね。司法試験では、どちらかというとマイナーな論点だったかなという印象です。
松尾浩順〔弁〕 話し合いで解決すればよいのですが、それではうまくいかないときもあります。そんなときには、裁判所などの外部に助けに入ってもらいたいところです。
滝口〔弁〕 今回はその課題を含めて考えてみたいと思います。
一同 よろしくお願いいたします。
憲法上の根拠は何か
滝口〔弁〕 団体の内部自治を守ることに法的な根拠があるのでしょうか。まずは、憲法を見てみましょう。国会による国会議員への懲罰については憲法58条2項に定めがありますね。
金岡宏樹〔弁〕 趣旨としては、三権分立では立法権の判断を尊重すべきであって、司法権が立法権の内部には及ばないことを定めたものといえます。
日本国憲法58条2項
両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
滝口〔弁〕 それ以外に、団体内部のことに裁判所が判断を差し控えることについて、憲法上の根拠はありますか。
金岡〔弁〕 国家からの介入を防ぐのは、憲法21条が定める「結社の自由」ということになります。
