はじめに
本特集は、2017年の地方自治法の改正もあり、自治体の監査委員が行う監査、審査、検査その他の行為(以下「監査等」という)において、今、議会選出監査委員(以下「議選監査委員」という)がどのような動きをし、役割を担っていくと、自治体の監査等がより機能していくかについて改めて見つめ直して論ずるとともに、様々な議選監査委員の実践についても紹介し共有を図ることで、全国の自治体の監査等を高めていくことを目的に発信されていると承知している。
あきる野市(以下「本市」という)における監査等は、「組織に潜むリスクを取り除くこと」を監査委員の基本姿勢にしていて、この3年ほどの間に、一つまた一つと新たな取組や視点をプラスし、機能を高めてきたところであり、まだまだ進化の過程にあると考えている。とはいえ、この進化の過程の取組について紹介することが、全国の自治体の監査等に関わっている方、特に議選監査委員として携わっている方の役に立つのであればと、今回の寄稿を引き受けたところである。
今回の寄稿では、字数等も限られていることから、この3年の間の取組で分かりやすい事例を中心にいくつか紹介する。なお、私が議選監査委員に就任してからの初動などについても興味のある方は、「今改めて考える議選監査委員の意義と使命」(地方財務2023年6月号)を参照願いたい。
代表監査委員(識見監査委員)との連携強化
本市の監査等について語る上で、まず知っていただきたいことは、識見監査委員と議選監査委員とのコミュニケーションについてである。2025年となり、私が議選監査委員となって早3年半を迎えたが、現在コンビを組んでいる識見の代表監査委員(税理士)が就任されての二人三脚も、この4月で丸3年となる。この間、代表監査委員とは監査委員会議などのオフィシャルの会議の際はもちろんのこと、それ以外のときにも毎週のように連絡を取り合い、課題や考え方、方向性などを共有し合いながら本市の監査等を前進させてきている。
参考としてお伝えすると、1年ほど前に代表監査委員がまとめてくれた資料によれば、2023年度は毎月の例月現金出納検査や定期監査などといったオフィシャルの会議をはじめ、研修会への参加や監査委員2人だけで行うミーティングなど、1年間で61回、顔を合わせてキャッチボールをしていたことが分かった。なお、今年度は2月末時点で64回と昨年度を若干上回るペースとなっており、実に、週に1回以上は顔を合わせていることになる。そして、このほかにも日々何か気になることがある際には、すぐに電話やメールでやり取りをすることにしており、必要と判断すれば、監査委員事務局にもすぐに指示を出すなどしている。
まさに、この豊富なコミュニケーションと連携の強化が、本市の監査等を充実させ進展させていく起点になっており、これから紹介する様々な成果を出せているゆえんの一つともなっている。ここに本市の特徴があるともいえるが、自治体の監査等を高めていく上で、識見と議選のキャッチボールがしっかりできているかは、非常に重要であると感じている。