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特集 求められる議会事務局

2022.03.10 議会事務局

「行動する議会(事務)局」の役割とは何か?~大津市議会局での実践~

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大津市議会局長/早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員 清水克士


 議会改革は最近十余年で、劇的に進展したといわれる。しかし、主に議員を読者とするウェブマガジンで「求められる議会事務局」という特集が成立すること自体が、多くの議会において補助機関組織のあり方が、いまだに大きな課題となっている証左といえる。
 自治体全体の視点から俯瞰(ふかん)しても、職員論が議論されることはあっても、「求められる首長の補助機関組織」とのテーマが、全国の行政機関で議論される状況にはない。その意味からは、議会で補助機関組織のあり方が共通課題となることは、行政との比較でも遅れているといわざるを得ないだろう。
 それを象徴するのは、議会の補助機関組織が多くの議会で「議会事務局」とされていることであり、問題の本質はこの名称にこそ隠されている。具体的には、執行機関である首長の補助機関組織は、総体を「首長事務局」や「執行機関事務局」などと称されるわけではない。内部組織においても「総務事務部」や「環境事務部」などとは称されないのに、議会の補助機関組織は、なぜ「議会事務局」と称されるのか。
 そこには、憲法が議会と首長を二元的代表制のもとで対等としながらも、地方自治法(以下「自治法」という)が「首長優位」の思想で立法されており、その補助機関の役割も議会では、「受動的姿勢で定型業務をこなすだけの議員のお世話係的組織」で良しとされてきた歴史的背景がある。
 法的にも、第28次地方制度調査会の「議会事務局の補佐機能や専門性の充実を図るべき」との答申などに鑑み、従前の自治法138条7項で議会事務局の業務は「庶務」とされていたものが、2006年の自治法改正でようやく「事務」へと格上げされている。それまでは議会事務局の機能は、定型的な議事運営の補助や庶務のみと捉えられ、法的には「議会事務局」ですらなく、「議会庶務局」として扱われてきたのである。
 私の経験上も、市町村アカデミーの議会事務局職員研修会で、局職員の本分は市民福祉向上のために議会の政策形成過程で「参謀」役を務めることであるとの趣旨で講義した後、受講者アンケートを見ると、大津市議会局の議会に発意するスタンスや、仕事は市民のためにするという視点が新鮮だったとの意見が多かった。逆説的に捉えれば、議会(事務)局職員(以下「局職員」という)は議員に対して受動的、かつ、議員のために仕事をする存在だとの感覚が、いまだに全国標準なのだと感じた記憶がある。
 だが、全ての地方公務員は、公選職ではなく市民のために働くことが義務付けられており、首長部局で長のために働くと答える職員に出会ったことはないが、議会の世界では議員のために働く存在だと錯覚している局職員は珍しくない。局職員は議会の補助機関であり、議会の構成員である個々の議員のために仕事をするのではなく、機関としての議会を支えることを通して市民のために仕事をする存在である、との本質的な部分の再確認が必要である。

大津市議会における議会局の役割

 大津市議会では、局職員も議員と協働する「チーム議会」の一員として、議会改革や政策形成に主体的に関与している。そして、市民にも定型業務をこなすだけの「議会事務局」ではなく、政策形成を議員との協働で担う組織であることを示すため、2015年4月に「議会局」に改称した。組織名称にこだわるのは、「名は体を表す」からである。
 では、政策形成を議員との協働で担う補助機関組織とはどのようなものか。大津市議会での政策形成の多くは、「政策検討会議」という議員間討議のスキームによっている。それは、交渉会派から提案された政策テーマが議会運営委員会で承認されれば、提案会派からは座長のほか、全会派から当該テーマの議論にふさわしい議員を1人ずつ選出してメンバーが構成され、テーマごとに設置される会議体である。政策検討会議では必要に応じて、議会と大学が連携すべく締結したパートナーシップ協定に基づいて有識者の派遣を大学に求め、会議の議論において専門的知見の活用を図っている。
 その特徴は、委員構成が議会の会派構成比とは異なり、結果的に少数意見が尊重された議論が実現することである。また、会議運営については座長の方針によるところが大きいが、局職員にも意見を求め議論に加える政策検討会議もある。
 局職員も議論に参画するような会議は、地方議会では稀有(けう)のようだが、大森彌・東京大学名誉教授は、議会・議員と「議会局」との関係について、「補助機関としての職員は、指示がなければ、上司の任務遂行に係る行動提案をしてはならないというわけではない。首長は、しばしば、補助機関としての職員に対して指示待ちでなく、率先して政策提案をするよう求めている。『補助機関』としての機能の中には、上司に当たる中核機関の意思決定のヒントになること……を積極的に助言・提案することが含まれている」(1)という。
 事実、行政機関においては、トップダウンで遂行される事業も多いが、職員からのボトムアップをきっかけとする事業も珍しくはない。しかし、議会では、「事務局職員が議員からの求めもないことを提案するといったことはあり得ない」とする地方議会が少なくない。市民の代表に仕えるという観点からは、法的にも両者の職員の立場には違いがないにもかかわらず、議会では、それが出過ぎたこととされるのはなぜであろうか。

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