自治体議会研究所代表/元三重県議会事務局次長 高沖秀宣
1 はじめに──議会の政策立案機能をサポートする役割
本特集では、筆者以外に市議会や町村議会関係者が、それぞれの議会の先進事例を紹介されると思うので、筆者は三重県議会事務局での実務経験から都道府県議会や政令市議会等の、いわゆる大規模自治体議会における議会事務局の役割について所見を述べさせていただく。
まず、議会が発揮すべき機能として監視機能や政策立案機能等が論じられることが多いが、大規模自治体議会では特にこの政策立案機能の強化が図られるべきであり、議会事務局職員もこの政策立案機能のサポート業務に積極的に従事すべきと思われる。具体的には、総務課であれば政務活動費を活用しての政策立案業務等であり、議事課であれば議会運営における委員会での政策立案業務等であり、調査課であれば議員提案の政策条例のサポート事務等が挙げられる。
しかしながら、実際に議会事務局職員がこの議会の政策立案機能のサポート業務にどのくらい関与しているかといえば、多くの議会では消極的に解されていることが多いのではないかと思われる。
現在、都道府県議会では32議会が、政令市議会では16議会が議会基本条例を制定施行しているが、議会事務局に関する条項は、ほとんどの議会基本条例中に規定されているものの、政策立案に関与する旨の規定は、筆者の知る限りでは特にないと思われる。
ただし、市議会レベルでは、例えば東京都多摩市議会では次のような規定が見られる。「議会事務局は、議会の政策立案活動等を補佐する」と議会基本条例で明快に宣言しており、これは注目されていいだろう。
◯多摩市議会基本条例
(議会事務局)
第20条 議会は、議長の統理する事務を遂行するため、地方自治法第138条第2項の規定により、議会事務局を設置します。
2 議会事務局は、前項によるもののほか、議会の政策立案活動、調査活動等を補佐する役割を担うものとします。
〔下線筆者〕
また、実際に議会基本条例で規定されている例はないが、かつて筆者が問題提起した(1)ように、例えば議会事務局の規定の条文の第2項で、次のように規定することも一方策ではないかと考えられる。
(議会事務局)
第〇条 (略)
2 議会事務局の職員は、議員(会派)から政策立案・政策提言等に関しサポートの依頼があった場合には、積極的に関与するものとする。