地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

特集 シティプロモーション

2019.09.10 まちづくり・地域づくり

シティプロモーション政策をどう見極めるか

LINEで送る

東海大学文学部広報メディア学科教授 河井孝仁

 

はじめに

 「一匹の亡霊がこの国の自治体を徘徊(はいかい)している。シティプロモーションという亡霊が」という言葉が適切だろうか。
 地方創生という美名のもとに、費用対効果が十分に検証されていない施策が「シティプロモーション」として、全国各地で行われている。首長と二元代表制を形成する一方の極である議会に、こうした無駄遣いにもなりかねない政策への的確な批判が求められる。
 シティプロモーションと名付けられ、行われている政策は数多い。動画編集業者に委託してつくられた自治体動画、広告代理店などに依頼してのキャッチフレーズとロゴの制定、萌(も)えキャラがにこやかに笑うポスター、首長部局が自治体の「色」を定め、その色の服を着る職員とその色に塗られた構造物、そしてイベントの数々。
 それらに使われる税金は、どのように説明可能なのか。地方自治体の存在目的は、地域に関わる人々の持続的な幸福をつくり出すことだろう。シティプロモーションとして行われている政策が、なぜこの目的の実現に資するのかを十分に検討しなければならない。

定量化されたKPIのない施策は行われてはならない

 ここで重要な考え方にロジックモデルがある。ロジックモデルとは、なぜその政策が目的を実現できるのかを、順序立てて説明できることを指す。このとき、必ずしも政策単体で自治体の目的が実現できなくともよい。それぞれの政策がどのように連携すれば目的を実現できるかが明確であればいい。
 首長部局が制作した自治体動画が10万回の再生を獲得したからといって、それだけでシティプロモーションが成功したとはいえない。その10万回の再生が、他のどのような政策による成果と結びついて自治体の目的である地域に関わる人々の持続的な幸福を実現するのかが問われなければならない。
 つまり、首長部局が仮説を持っているかどうかを問う必要があるということだ。その自治体動画制作で、どのような成果を上げようとしているのかをまず問う。例えば、成果目標が10万回再生だとする。これがKPI(重要業績評価指標)になる。このKPIが実現され、さらに連携する他の施策のKPIも実現されることで、どのようなロジックモデルによって、自治体の目標である地域に関わる人々の持続的な幸福につながるかを、首長部局が仮説として持っているかを確認することが必要になる。
 定量化されたKPIのない施策は行われてはならない。強制的に徴収される税を資源とすることで説明責任(アカウンタビリティ)が必須となる行政施策は、何を実現するのかを問わないまま、あるいは曖昧にしたまま、行き当たりばったりで行われてはならない。「どうなったら成功と考えられるのか」について、言を左右にすることができる施策は、議会として評価することさえできない。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る