2025.11.25 議会改革
【セミナーレポート】「全国地方議会サミット2025」(Day1・Day2)
(Day2)【地方議会の政策づくり】「実践編① ~子ども・若者との政策づくり~」
こども基本法の施行により、地方自治体には子ども・若者の意見を政策に反映することが求められています。三議長会では、主権者教育の推進に取り組んでおり、行政による実践が進む一方で、「議会として十分に対応できているか」という視点から、「子ども・若者との政策づくり」をテーマとし、林紀行氏(日本大学法学部教授/早稲田大学デモクラシー創造研究所招聘研究員)をコーディネーターに先進事例の報告が行われました。
◆田口裕斗 NPO法人DAKKO理事
「議員との対話で民主主義の担い手を育てる」
田口氏からは、子どもから大人まで主権者教育を行う活動の中で、実施された具体的な取り組みが紹介されました。10~20代を対象に予算配分を実際に考えるセッションを行った取り組みや、小学生を対象とした双六を通して議員体験をする取り組みを通して、世代や背景を超えた対話が参加者の考えや思いを共有し、政治参加のきっかけになることが示されました。一方で、「民主主義の担い手を育てるために、この関わりをどのように継続していくか」という課題が提起されました。
◆勝山祥 富士見市議会議長
「富士高生の主張 in 富士見市議会」
勝山氏からは、県立高校と連携し、議場で「富士高生の主張 in 富士見市議会」を開催した事例が紹介されました。主な工夫として、「生徒募集時に、前年度参加者によるデモ発表を実施し、参加意欲を高めたこと」「発表の様子をZoomで配信し、校内の生徒も傍聴できる形にしたこと」など、多くの生徒の関心を引き出す仕組みが随所に施されていました。勝山氏は、こうした取り組みを成立させるうえで「学校の理解と協力が不可欠である」と強調しました。
◆笹田卓 浜田市議会副議長(前議長)
「主権者教育につながるこどもの意見の施策反映」
笹田氏からは、市民が暮らしの中で感じていることを議場で発表できる「はまだ市民一日議会(フリースピーチ)」の取り組みが紹介されました。議会を身近に感じてもらい、より開かれた議会を実現することを目的としており、実際に子どもの意見が施策に反映された事例も示されました。また、「小中学生の議場見学」「島根県立大学との連携」「高校生との意見交換会」など、政治参加意識の向上、主権者意識の醸成、議会活動の活性化につながる多様な取り組みが報告されました。
(Day2)【地方議会の政策づくり】「実践編② ~議会による政策づくり~」
AI活用が進む中で、住民の声や地域課題に寄り添った政策立案の重要性が高まってきた背景を踏まえ、対話や調査を重ねながら政策を形にしてきた先進議会の取り組みについて、江藤俊昭氏(大正大学教授)をコーディネーターに各議会から報告が行われました。
◆勝浦伸行 一関市議会議長
「『政策提言等の実施に関する指針』の策定と実践」
勝浦氏は、議会基本条例で「独自の政策立案や政策提言への取り組み」を明示し、その手順や手法の指針を策定。常任委員会の所管事務調査に基づき、具体的な政策を立案している事例を紹介しました。
◆高橋英昭 横須賀市議会 政策検討会議委員長
「政策形成サイクルの実践と実例紹介」
高橋氏は、市民サービス向上や行政課題解決を目的に「未来への羅針盤2027」を策定。政策課題を条例制定か政策提案かで検討・決定する仕組みを設け、政策検討会議で計画策定や進捗管理を行う事例を報告しました。
◆外山利章 知名町議会議長
「各常任委員会による町民起点の政策提言」
外山氏は、各常任委員会を議会改革推進会議の分科会として位置づけ、所管事務調査を通じて総合振興計画の課題を具体的な提言に反映している事例を紹介しました。
(Day2)【北川正恭 早稲田大学名誉教授 LM最終講義】
最後に、北川教授による【LM最終講義】が行われました。講義では、二元代表制の意義や議会の変遷を振り返りつつ、新時代に向けた議会改革の方向性、地方議会や議員の役割、そして「善政競争」の重要性について、参加者と議論が交わされました。
まず、「議会改革と北川正恭 足跡を再検証する」と題し、廣瀬克哉氏(法政大学教授)、前田隆夫氏(西日本新聞論説委員)、江藤俊昭氏(大正大学教授)が北川教授のこれまでの改革や運動を振り返りました。コーディネーターは千葉茂明氏(日本生産性本部)が務め、二元代表制の意義や議会の変遷を参加者と共有し、議論を深めました。
その後、北川正恭氏(早稲田大学名誉教授)が「LM最終講義」として講演。分権改革やマニフェスト運動を振り返り、国と地方が「主従関係」から「対等・協力関係」へと変化していることを認識し、日常の行動で体現する重要性を強調しました。また、議員個人の努力に加え、会派や議会全体で進める『チーム議会』の重要性にも触れ、デジタル革命・AI時代における新しい統治の価値創造を参加者に呼びかけました。
